ゲールからスマートフォンの画像を見せられたシーニーは
険しい表情を浮かべたまま黙っていた。
そして。
「…成程な。そう云う事やったんかい」
= シーニー? =
「鷹矢の殺され方は俺も知っとるけどな。
執拗に刺された後、首を絞められとった。
どの段階で
あまりにも惨いやり口やったから…
単なる口封じでは無いと思っとった」
= 阿佐は【怨恨】って言ってた =
「あぁ。理由は【妙子】やろうな」
= どうして妙子さんが? =
「奴の事を少し調べてみたんやけどな」
そう言って、シーニーは軽やかにキーボードを叩いた。
モニターに表示される情報に
ゲールは目を大きく開いて息を飲んだ。
「渡邊 純一は
経済界のフィクサーと呼ばれる男の孫息子。
幼い頃から欲しい物は全て金で解決してきた。
金さえあれば、何でも解決出来ると思って来た。
ところが」
= 妙子さんは、金で転ぶ様な女性じゃなかった =
「聡明な女性やからな。当たり前の事や。
両親が幾ら認めんとはいえ、彼女は鷹矢をずっと愛しとる。
だから彼女の親に揺さぶりをかけて
婚約を取り付けようとしたが…
妙子から激しく拒絶されて、計画は頓挫した」
= だから…ロッソ、鷹矢を…? =
シーニーは声を出さずに頷いた。
ゲールが奥歯を噛み締め、怒りを露わにする。
= 許せない =
「ゲール?」
= 殺してやる =
彼が此処迄殺意をハッキリと露出させる事は滅多に無い。
いつ以来か。
アレは…ベルデ、志穂を殺した犯人を捕らえた時。
確かその時も彼はこうやって怒りを露わにし
自分が処刑すると言って聞かなかった。
「ゲール、
= でも…… =
「依頼が無い限り、俺等は手を出せん」
= じゃあ僕がっ!! =
「身内のそれは【依頼】にならんよ、ゲール」
シーニーはそう言って優しく彼を宥める。
以前と同じ様に、優しく穏やかに。
「確かに、依頼が無い限り俺等は復讐業を行えん。
でもな…。依頼が入ればこっちのもんや」
= シーニー… =
「必ずその時は来る。
そうやから、今は辛抱…な?」
= うん…。シーニーがそう言うなら…… =
「ほんまに良ぇ子やな、ゲールは」
シーニーはそう言うと
自分よりも大きなゲールの頭を
幼子にする様に優しく撫でていた。
『そうや。もう昔通りにはいかへん。
渡邊 純一の悪運もこれ迄やな』
近未来の映像が見えるシーニーだからこその自信。
彼の見た未来は、もう目の前に迫っていた。