事件ファイル No.6-2

鷹矢 晋司 暴行殺人事件・後編

地下。シーニー自室。

ゲールからスマートフォンの画像を見せられたシーニーは
険しい表情を浮かべたまま黙っていた。
そして。

「…成程な。そう云う事やったんかい」
= シーニー? =
「鷹矢の殺され方は俺も知っとるけどな。
 執拗に刺された後、首を絞められとった。
 どの段階で彼奴アイツが事切れたかは知らんが
 あまりにもむごいやり口やったから…
 単なる口封じでは無いと思っとった」
= 阿佐は【怨恨】って言ってた =
「あぁ。理由は【妙子】やろうな」
= どうして妙子さんが? =
「奴の事を少し調べてみたんやけどな」

そう言って、シーニーは軽やかにキーボードを叩いた。
モニターに表示される情報に
ゲールは目を大きく開いて息を飲んだ。

渡邊わたべ 純一じゅんいち
 経済界のフィクサーと呼ばれる男の孫息子。
 幼い頃から欲しい物は全て金で解決してきた。
 金さえあれば、何でも解決出来ると思って来た。
 ところが」
= 妙子さんは、金で転ぶ様な女性じゃなかった =
「聡明な女性ひとやからな。当たり前の事や。
 両親が幾ら認めんとはいえ、彼女は鷹矢をずっと愛しとる。
 だから彼女の親に揺さぶりをかけて
 婚約を取り付けようとしたが…
 妙子から激しく拒絶されて、計画は頓挫した」
= だから…ロッソ、鷹矢を…? =

シーニーは声を出さずに頷いた。
ゲールが奥歯を噛み締め、怒りを露わにする。

= 許せない =
「ゲール?」
= 殺してやる =

彼が此処迄殺意をハッキリと露出させる事は滅多に無い。
いつ以来か。
アレは…ベルデ、志穂を殺した犯人を捕らえた時。
確かその時も彼はこうやって怒りを露わにし
自分が処刑すると言って聞かなかった。

「ゲール、私刑リンチはアカン」
= でも…… =
「依頼が無い限り、俺等は手を出せん」
= じゃあ僕がっ!! =
「身内のそれは【依頼】にならんよ、ゲール」

シーニーはそう言って優しく彼を宥める。
以前と同じ様に、優しく穏やかに。

「確かに、依頼が無い限り俺等は復讐業を行えん。
 でもな…。依頼が入ればこっちのもんや」
= シーニー… =
「必ずその時は来る。
 そうやから、今は辛抱…な?」
= うん…。シーニーがそう言うなら…… =
「ほんまにぇ子やな、ゲールは」

シーニーはそう言うと
自分よりも大きなゲールの頭を
幼子にする様に優しく撫でていた。

『そうや。もう昔通りにはいかへん。
 渡邊 純一の悪運もこれ迄やな』

近未来の映像が見えるシーニーだからこその自信。
彼の見た未来は、もう目の前に迫っていた。
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