事件ファイル No.6-4

鷹矢 晋司 暴行殺人事件・後編

【Cielo blu in paradiso】ホール。

神妙な顔つきのシーニーと阿佐。
ロッソはベルデに手当てをしてもらいながら
ゲールは妙子と和司を気遣いながらの参加だ。
疲れ果てたのか、
和司は妙子の腕の中で小さな寝息を立てていた。

「妙子さんに説明せんとアカン話が有ったんや」

シーニーは静かに切り出した。

「でもこれは俺等よりも…
 阿佐、お前の方が適任かも知れん」
「俺が?」
「お前は本職やろ。
 それに…これに関して俺等は【当事者】やからな」
「あぁ…。成程。
 それじゃ…シーニー、このノートPCを借りるよ」
「どうぞ」
「スクリーンを見ながら説明しますんで
 解らない事があったらどんどん質問してくださいね」
「は…はい……」

何が始まるのか解らず、妙子は気が気でない。

「心配要らない」
「晋……」
「何も心配しなくて良い」
「大丈夫よ、妙子さん」
「志穂ちゃん……」

目の前に居るのは大切な自分の親友。
彼等がそう言うのだ。
自分に不利な事だけには絶対にならない。
そう思うと、妙子は緊張が解けたのか
静かに笑みを浮かべた。

「ロッソから聞きました。
 渡邊が【NUMBERING】の事を話したと」
「はい…。確かに晋に向かってそう言いました」
「結論から言うと、此処に居る面々は
 その【NUMBERING】です」

阿佐はNUMBERINGについて詳細を語った。
事件・事故で亡くなったとされる
戸籍を消失した者達の末路。
或る者は肉体改造され、或る者は記憶操作され
唯 戦う為だけの兵器として訓練を受ける。
社会に出て来れるのは極一部であり
彼等は自分の所有者の為だけに戦う駒となる。

「そんな事が……」
「残念ですが、事実です。
 お恥ずかしながら、警察官である僕ですら
 彼等に会う迄は全く知らない世界でした」
「…NUMBERING」
「NUMBERINGは本来、人類の敵である。
 確かそうだったよね、シーニー?」
「あぁ」
「全てのNUMBERINGが…人類の敵…?」
「当初はその筈だった。だが」
「私達四人だけは違うの」
「…えっ?」
「NUMBERINGを倒す為に結成されたのが
 俺達【Memento Mori】だ」

妙子に微笑み掛けるロッソとベルデ。
シーニーやゲールも笑顔で頷いている。

「彼等はこの世界で唯一の、
 人間側に立って戦うNUMBERINGです」
「…そう、だったんだ」

安堵の息が妙子の口を突いて出て来た。
彼女にとっては
NUMBERINGの存在そのものが重過ぎた。
尚且つ、NUMBERINGが敵だと知った時の衝撃は
阿佐のそれと比較してもかなり大きかっただろう。
そんな不安を蹴散らしてくれたのが
ロッソとベルデ、妙子からすれば晋司と志穂だった。
妙子はそれだけで、
此処に居る彼等全員を信じるに値すると感じ取った。
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