事件ファイル No.6-5

鷹矢 晋司 暴行殺人事件・後編

「鷹矢」

シーニーはロッソを本来の名前で呼んだ。
態々わざわざそう呼んだと云う事は
其処に必ず深い意味が有る。

「何だ?」
「お前の殺害を依頼したのは渡邊 純一。
 …間違い無いな?」
「…あぁ。俺に止めを刺したのも奴だ」
「あの刺し傷の数……。やっぱりな…」
「……」
「まさか…渡邊さんが……?」

衝撃の事実に、妙子は眩暈を覚えていた。
ふらつく上体をゲールが優しく支える。

「妙子さん。あの男は一体…?」
「私の、大学時代の先輩だったの。
 当時からしつこく言い寄られて、
 両親に迄色目を使って…。
 でも、私は晋の事が忘れられなかったから
 ずっと断って来た。それなのに……」
「鷹矢が生きている限り、決して自分のモノにはならへん。
 それならば鷹矢を殺してしまえばぇ」
「「?!!」」
「だが、それでも妙子さんの気持ちは動かんかった。
 だから今度は執拗に和司を付け狙っとる。
 …大凡、そんな所でしょ」
「…最低。そんな下らないプライドなんかで。
 人の生命いのちを何だと思ってるのっ?!」
「(許せない!!)」
「だがこの話には、まだ続きが有ってやな」

シーニーは再度、ロッソに視線を合わせた。

「奴は親父の所有するNUMBERINGを使って
 お前を殺害しようとした」
「…何だと?」
「お前を襲った複数人の中に紛れ込んどったんや」
「…じゃあ、アレか。
 俺の腕と脚を粉砕した奴等」
「間違い無い。
 素手で成人男子の腕と脚
 砕ける奴なんてそうそうらん」
「どっちが私怨だよ!
 渡邊のやり口の方が、余程私怨だろうがっ!!」

阿佐は感極まり、壁に拳を叩き付けた。

いてぇーーーっ!!」
「当たり前や、阿呆アホ
 何やってんねん」
「骨、折れてない? 診せて」

ベルデは苦笑を浮かべながら
負傷した阿佐の右拳を確認する。

「うん。大丈夫。
 折れて無いし、ヒビも入ってないわ」
「(良かった!)」
「気ぃ付けぇや、全く」
「…済みません」
「シーニー、確認だが」
「何や?」
「渡邊は一族として何体NUMBERINGを所有してる?」
「12体やな。殆どは引退した御隠居のモノやけど
 息子である現当主とバカ孫息子が
 譲り受けてる可能性はある」
「最悪、12体と激突か」
「ランクはB'ビーダッシュが2体。
 残りは全てBや。今迄の様にはいかんで」
「B'って、どれ位強いんだ?」
「一応リスト登録されている順だと…
 最上位が【S】でその次がA'かな?
 で、A・B'・B・C'・C……って」
「じゃあランクCって最下層なんだ」
「ほぼ改造入ってへんからな、ランクCは」
「相当強いって事か……」
「俺達の足元にも及ばねぇよ」

心配そうに此方を見ている妙子を励ます様に
ロッソはそう言って笑った。

「俺達は【NO NAME名無し】。
 ランクSSSトリプルエスのNUMBERINGだぜ」
Home INDEX ←Back Next→