シーニーは再度妙子を見つめる。
妙子も又、目を逸らす事無くシーニーを見つめ返した。
「【Memento Mori】は復讐代行者として仕置きしますねん。
NUMBERINGはそれぞれ殺人許可証を所持してますし」
「はい……」
「但し、私怨での復讐は認められて無いんですよ。
当たり前なんですけどね。
んな事許したら俺等、気に入らん奴を殺し放題や」
「…シーニーさん?」
「誰か
鷹矢 晋司の無念を晴らすべく
俺等に依頼してくれそうな奇特な人」
「シーニー…」
あからさま過ぎるお願いに
ロッソは思い切り呆れ顔を晒している。
「NUMBERINGのルールとして
自身の過去を明かしてはならんてのが有ります。
一度死んで歴史から抹消された存在故
今生きてる人や社会に迷惑掛けたらアカンのですわ」
「それと…私怨で動いてはならない、と言うのが」
「まぁ、そう云う事ですな。
結構窮屈なんですわ、こう見えて」
「……」
「無料で依頼引き受ける気も無いくせに
そう云う事をポンポン言うなよな、シーニー」
「だって俺等かってデメリットの方がデカいんやで?
ボランティアで復讐代行してる訳や無いし」
「じゃあ、俺が依頼を…」
「お前は
「じゃあ私が!」
「ベルデ! ゲールもやけど、
復讐を実行する奴が依頼出そうとすんな!!
ルール解ってて言ってんのやろうな?!」
「だって……」
「(そうだよ! どうするんだよ!)」
「…流石に俺が、って訳にもいかないし……」
「刑事が復讐依頼出したら世も末じゃ!!」
シーニーは
妙子の目にはそう映っていた。
鷹矢の無念を晴らす為に。
そして、和司の未来を守る為に。
しかし…その代わりに自分は何を投げ出せるだろうか。
「依頼料は…お金、ですか?
それとも…私の
「妙子?」
「…金も生命も要りまへん。
但し、それ相応の【代償】は覚悟してもらわんと」
「代償、ですか?」
「貴女の場合やと…そうですね。
和司君の父親は【死んだ】と
ちゃんと彼に伝えてもらう事、でしょうね」
「シーニーっ?!」
「ちょっ! シーニーっ!!」
「鷹矢は死に、NUMBERINGのロッソとなった。
その時点でもう、真っ当な人生は送れんのですわ。
息子さんが成人になって、中年になって、
爺さんになっていっても…
そんな男を【父親】って呼べますか?」
シーニーはずっと悩んでいた。
正直に話す事は簡単だ。
だが、歪められた時間の流れはもう戻せない。
ロッソも妙子も、そしてまだ幼い和司にも
諦めなければならない【現実】が
容赦無く重く圧し掛かる。
自分が悪役に収まる事で
これ以上誰も傷付かない様にと。
それが、シーニーの打ち出した最善策だった。