事件ファイル No.7-14

女子大生飛び降り事件・前編

「飛び降り?」

突如入って来た速報。
厨房に居た妙子は思わず声を出した。
彼女の声に反応し
阿佐が掃除の手を止めてモニターを確認する。
其処に映し出された女性の顔写真を見るや
彼はおおよそ刑事らしくない叫び声を上げた。

「花菜子ちゃんっ?!
 そんな、嘘だろっ?!!」
「「?!!」」

厨房に居た三人が慌ててホールへと出て来た。
全員でモニターを見るが
間違い無く、転落した女性は花菜子だった。

「花菜子ちゃん…どうして……?」
「何か変だ。昨日の今日だぞ?
 然もこんな朝早くに……」

ロッソとベルデは顔を見合わせる。

「晋、志穂ちゃん!
 早く現場に向かって!」
「妙子?」
「妙子さん…」
「此処は私に任せて!
 こんなの、私も納得出来ない!
 きっと現場に行けば何か判る筈!
 そうでしょ?」
「…あぁ、そうだな。
 現場検証を終えられる前に
 俺達の【目】で確認しないと」
「…そうよね。
 きっと花菜子ちゃんなら
 何かを残してくれている筈。
 それがどんなにかすかな【音】でも…」
「お願いね、二人共!」
「分かった。店は任せたぞ、妙子。
 行くぞ、ベルデ!」
「うんっ!!」

二人は着替える事無く
そのまま店を飛び出して行った。
超一級の戦士だけあり
あっという間にその姿が見えなくなった。

その直後。
ゲールから精神感応テレパシー
説明を受けたらしいシーニーが
漸くホールへ姿を見せた。
顔面蒼白でいつも以上に血の気が無い。

「シーニー。
 今、ロッソとベルデが現場に…」
「あの二人だけでは
 検証中の現場には立ち入れんやろ。
 現職のお前の力が必要や。
 俺等も後を追うで、阿佐」
「勿論だ!」
「ゲール。妙子さんと和司君を頼んだで」
「(任せて!)」

シーニーと阿佐もそのまま店を後にした。
シーニー自身も動くとなると
瞬間移動テレポーテーションは使えないのか、
二人はロッソ達と同じく
走って現場へと向かった様だ。

「…こんな、こんな事って……」

彼等の前では気丈に振舞っていたが
流石に妙子もかなり心に堪えたらしい。
信じられない、と何度も口にして
椅子に倒れ込む様にして座った彼女を
ゲールが優しく支えている。

「ありがとう、ゲール君…」
「(無理しないで)」
「えぇ…。無理は禁物ね」

弱々しい笑みを浮かべる妙子の姿に
ゲールは一人、胸を痛めた。
只、彼女に対して出来る事は
こうやって傍に居て、優しく背中を摩るだけ。
それでも妙子にとっては
この温もりこそが
何よりも心を癒してくれていた。
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