シーニーのスマートフォンに届けられた
ショートメール。
彼は険しい表情を浮かべたまま
その一文を凝視している。
「シーニー?」
「ん? 何や、ロッソ?」
「休憩取るかと思ってな。差し入れだ」
「おおきに」
シーニーは運ばれて来た珈琲に舌鼓を打つと
ホッと一息入れた。
「どうした? 浮かない顔だな」
「これ」
「これ?」
「水間ちゃんから」
「…何だこれ?」
「【コイツ】の事やろう」
シーニーはそう言って
キーボードで何かを打ち込んだ。
何処かのサイトのURLの様だ。
「怨掲示板?」
「復讐掲示板の真似やな。
実際に稼働しとるみたいや」
「復讐による殺人も可能って訳か?」
「現状では断言出来んが」
「NUMBERINGの動きは確認出来てないんだよな?」
「そう。だからNUMBERINGの仕事やない。
奴等がこんな杜撰な仕事はせんからな」
シーニーがPCの画面上に出して来たのは
ここ最近の不審死の現場写真だった。
「素人が……っ」
憎々しげに呟くシーニーの目が
いつもの飄々とした物から
殺し屋の【それ】へと変わっている。
「どうする? 今直ぐ潰すか?」
「依頼も無いのに動けるかいな」
「その辺、頭硬いな。お前」
「私刑は認められん。
基本が緩んだら、統制が取れん様になる。
俺等だけやない。
世界中のNUMBERINGがや」
「シーニー…」
「規律が有るからこそ、
俺等が動く意味も出来るんや。
意味を履き違えたらアカン」
「俺達が動く意味、か……」
「そう云う事」
「癪に障るが、仕方が無ぇな」
ロッソは持ってきたクッキーを齧ると
そのまま掲示板の内容に目を向けた。
「闇の何でも屋…。センスも節操も無ぇよな」
「本当に何でもやりおるみたいやぞ。
然も『お値打ち価格』で」
それがシーニー特有の嫌味である事は一目瞭然だ。
「しかし水間も水間だよな。
警察が見付けたんなら
さっさと証拠抑えて動けっての」
「水間ちゃんがそんな事すると思うか?
きっと今頃は面白がって眺めとるわ」
「…
最近は阿佐ですら疑ってるぞ?」
「さてねぇ~。
水間ちゃんがどんな野望を企ててんだか。
考えるだけで頭痛いわ」
「シーニー……。
水間の動きで何か解ったら
ちゃんと俺達に言えよ?」
「ロッソ?」
「心配してんだぞ、これでも。
ベルデやゲールが」
「お前は?」
「…言うか、莫迦」
「『お前も』って事で良いんやな」
「言わねぇよ」
「…おおきに、ロッソ」
「……」
照れ隠しなのか、
ロッソはクッキーを3枚口に放り込むと
そのままシーニーの部屋を後にした。