「まぁね」
「今見せてくれねぇの?」
「ロッソは当日に見てください」
「何だよ、それ!」
彼は盛大に噴き出すと厨房へと向かった。
全員分の飲み物を用意してくれているのだ。
「しかし災難だったな、その子」
「そうなのよね。
大体、気持ち悪いと思わない?
何の覚えも無いのにさ!」
「あぁ、気味が悪ぃし胸糞も悪ぃ」
流石は鷹矢 晋司。
身に覚えの無い恨みを買って
惨殺されただけの事はある。
ロッソの口調は冷静だったが、
感情を抑え込んでいる分 不気味でもあった。
「で」
「ん?」
「交換しちゃった!」
「何を?」
「連絡先! ほら、シーニーにスマホ貰ったし!」
「…それはそれは」
「見てみて!」
ベルデはロッソに抱き着くと
そのまま自身のスマートフォンの画面を見せて来た。
彼女のカラーである鮮やかな緑色のボディが
店内の照明に照らされて輝いている。
「連絡先の交換ってLINE?」
「そうだよ。それと電話番号!」
「ふ~ん」
「ロッソも交換する?」
「何で俺が?」
「妙子さんも交換したよ?
ゲールも、阿佐も」
「その場に居た全員じゃねぇか」
二人のノンビリとした会話を聞きながら
妙子は苦笑を浮かべていた。
「まだ苦手なの? SNS」
「……」
「いい加減に慣れなさいよ。
志穂ちゃん。
後で晋をグループに呼んであげて」
「うん。解った!」
「…妙子。お前なぁ」
「ロッソにも苦手な物が有るんだな」
「(知らなかった)」
「どうして苦手なの?」
「苦手じゃなくて、面倒臭いんだって」
「…一緒じゃない」
ベルデの鋭いツッコミに対し
その場に居た全員が一斉に笑い出した。
一方、地下 シーニーの自室。
「…随分と気紛れな奴ちゃな。
俺に直接電話入れてくるって
どう云う風の吹き回し?」
『生存確認だ。深い意味は無い』
「不老不死相手に【生存確認】って
それ、めっちゃ無意味と違うか?」
『かも知れんな』
電話の相手は水間である。
『見たか?』
「見たで。それで?」
『随分と御粗末な運営でな。
正直、目障りだ』
「ならそっちで潰せば良ぇやん」
『こっちはこっちで
連日事件や事故で立て込んでいるんだ。
【害虫】退治はお前達の方が得意だろう?』
「よぅ言うわ……」
溜息を一つ吐き、シーニーが続ける。
「【依頼】やったら考えたっても良ぇで」
『成功報酬、即金で5億円』
「…悪ぅないな。
しかしそんな大金、動かせるんか?」
電話口で水間の笑い声が聞こえてくる。
随分と機嫌の良い様子だ。
「契約成立、かな?」
『宜しく頼むよ、【Memento Mori】』