事件ファイル No.7-6

女子大生飛び降り事件・前編

「で、揃ったのか? 衣装は」
「まぁね」
「今見せてくれねぇの?」
「ロッソは当日に見てください」
「何だよ、それ!」

彼は盛大に噴き出すと厨房へと向かった。
全員分の飲み物を用意してくれているのだ。

「しかし災難だったな、その子」
「そうなのよね。
 大体、気持ち悪いと思わない?
 何の覚えも無いのにさ!」
「あぁ、気味がわりぃし胸糞もわりぃ」

流石は鷹矢 晋司。
身に覚えの無い恨みを買って
惨殺ころされただけの事はある。
ロッソの口調は冷静だったが、
感情を抑え込んでいる分 不気味でもあった。

「で」
「ん?」
「交換しちゃった!」
「何を?」
「連絡先! ほら、シーニーにスマホ貰ったし!」
「…それはそれは」
「見てみて!」

ベルデはロッソに抱き着くと
そのまま自身のスマートフォンの画面を見せて来た。
彼女のカラーである鮮やかな緑色のボディが
店内の照明に照らされて輝いている。

「連絡先の交換ってLINE?」
「そうだよ。それと電話番号!」
「ふ~ん」
「ロッソも交換する?」
「何で俺が?」
「妙子さんも交換したよ?
 ゲールも、阿佐も」
「その場に居た全員じゃねぇか」

二人のノンビリとした会話を聞きながら
妙子は苦笑を浮かべていた。

「まだ苦手なの? SNS」
「……」
「いい加減に慣れなさいよ。
 志穂ちゃん。
 後で晋をグループに呼んであげて」
「うん。解った!」
「…妙子。お前なぁ」
「ロッソにも苦手な物が有るんだな」
「(知らなかった)」
「どうして苦手なの?」
「苦手じゃなくて、面倒臭いんだって」
「…一緒じゃない」

ベルデの鋭いツッコミに対し
その場に居た全員が一斉に笑い出した。

* * * * * *

一方、地下 シーニーの自室。

「…随分と気紛きまぐれな奴ちゃな。
 俺に直接電話入れてくるって
 どう云う風の吹き回し?」
『生存確認だ。深い意味は無い』
「不老不死相手に【生存確認】って
 それ、めっちゃ無意味と違うか?」
『かも知れんな』

電話の相手は水間である。

『見たか?』
「見たで。それで?」
『随分と御粗末おそまつな運営でな。
 正直、目障りだ』
「ならそっちで潰せばぇやん」
『こっちはこっちで
 連日事件や事故で立て込んでいるんだ。
 【害虫】退治はお前達の方が得意だろう?』
「よぅ言うわ……」

溜息を一つ吐き、シーニーが続ける。

「【依頼】やったら考えたってもぇで」
『成功報酬、即金で5億円』
「…悪ぅないな。
 しかしそんな大金、動かせるんか?」

電話口で水間の笑い声が聞こえてくる。
随分と機嫌の良い様子だ。

「契約成立、かな?」
『宜しく頼むよ、【Memento Mori】』
Home INDEX ←Back Next→