事件ファイル No.7-7

女子大生飛び降り事件・前編

合コン当日になって
急に行きたくないとごねるロッソ。
ベルデと妙子に説得されたものの
やはり気持ちが乗って来ない様だ。

「何で此処迄消極的なんだ?」
「(分かんない)」
「昔から結構モテてた筈なのに、
 告白とか全部無視してきてるし」
「やっぱり晋司、モテてたんだ…。
 そりゃそうだよね。格好良いし……」
「大丈夫よ、志穂ちゃん!
 晋は志穂ちゃんの事しか考えてないから」
「本当?」
「本当、本当! 四六時中貴女の事ばっかり!」
「妙子、五月蠅うるせぇ!」
「ほら、ムキになった。
 こう云う時は『当たり』なの。
 覚えておいて損は無いわよ」
「……」
「(ロッソ、滅茶苦茶機嫌悪そう…)」
「(阿佐、もう直ぐ時間だよ? 大丈夫?)」
「(参加出来るのかな、俺達…?)」
「私、CARATIのディナーケーキ食べたい!」

ベルデが急に子供じみた事を言い出した。
あんぐりと口を開けて此方を見るロッソに
更に畳み掛ける様に発言を繰り返す。

「食べたい、食べたい!
 どんな味なのか興味有るもん!
 妙子さんや和司君やシーニーにも
 お土産買いたいもん!!」
「シーニー、遂にベルデの中で
 扱いが一番下か……」

地下室でこの会話を聞いているであろうシーニーが
肩を落とし、ガックリと項垂れる姿が
阿佐には容易に想像ついた。

「妙子さんに手伝ってもらって
 折角男の子に変装したのに!!」
「…誰も『行かない』とは断言してねぇだろ?」
「(しかけてたじゃんか…)」
「(まぁまぁ、阿佐。落ち着いて)」

流石のロッソもベルデの圧しには弱いらしい。
重い腰を上げ、自室へ向かおうとする。

「何処に行くの?」
「支度済ませて来るんだよ。
 流石に普段着で顔出す訳にもいかんだろうし」

やや足早に自室へと消えて行くロッソ。
ベルデはニコニコしながらその後姿を見送る。
ロッソがキチンとした格好をする事はあまりない。
シェフの姿か、普段着はラフな格好なので
所謂いわゆる正装を見た事が無いのだ。

「妙子さんは見た事有る?」
「成人式位かな?
 でも、結構決めてくるわよ。
 本気を出した時の晋は」
「楽しみ~~~!」

ベルデはとてもワクワクしている。
見ているだけでも伝わってくる。

ロッソが部屋から出て来たのは15分程経ってから。
時間はそれ程掛からなかったが
普段は見せない大人の男の姿が其処そこに在った。

「似合うじゃん、スーツ…」
「キツいからあまり着たくない」
「一番モテるんじゃない? もしかして…」
「冗談じゃねぇぞっ!
 俺は飯を食いに行くだけ!
 女の相手はお前が引き受けろよ、阿佐っ!!」
「何しに合コンに行くんだか……」
「あ、阿佐君。言うのを忘れてたけど」

妙子はそう言って意地悪そうに微笑んだ。

「晋って…実は女嫌いなのよ」
「妙子さんっ?!
 それ! 最初に言って!!」

悲鳴の様な阿佐の声に
ホール内は爆笑で包まれた。
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