事件ファイル No.8-2

女子大生飛び降り事件・後編

「あの場所は完全に【フェイク】だ」

帰り道、ボソッとロッソが呟いた。

「そうやろうと思った」
「犯人?と思われる男達の
 下卑た声しか残ってなかったの。
 だから…きっと別の場所で……」
「問題はその場所探しって訳か。
 今日中に探せそうか、二人共?」
「今からでも当たってみるさ」
「必ず見付けてみせるわよ」
「頼むわ。恐らくは明日位に通夜となる。
 告別式迄には決着を付けたい」
「だが、今のままじゃ【私怨】だとよ」
「解っとる」

シーニーはそう言うと深い溜息を吐いた。

「『止められる』と、思ってたんや」
「何を?」
「彼女の未来を変えられると…
 俺の力で変えてやれると、思っとった」
「じゃあシーニーには
 花菜子ちゃんの未来が見えてたの?」
「……あぁ」
「ならどうしてっ?!」
「止めろ、ベルデ」
「でも、ロッソ……」
「シーニーにだって解ってたんだよ。
 それが【奢り】だって事位はな。
 だけど、何とかしたかった。
 『自分の力で』彼女を救いたかった」
「ロッソ……」
「最初から『お前らしくない』とは思ってたが
 花菜子ちゃんを疑っているから接近したんじゃなく
 彼女を守りたかったから、距離を縮めたとは」
「今なら解る気がするわ。
 鷹矢。お前の【想い】が、な……」

シーニーの目から一筋の涙が落ちた。
それは無念の涙なのだろうか。

「犯人は怨掲示板を利用している」

ロッソはそう言うと表情を険しくさせた。

「潰す機会が出来たんだ。
 花菜子ちゃんが俺達にくれた好機チャンス
 逃す手は無ぇぞ、シーニー」
「ロッソ…。お前……」
「徹底的にあの掲示板を洗え。
 お前、そう云うの得意だろうが」
「…あぁ」
「現場は俺とベルデに任せろ。
 絶対に見付け出してやるから」
「ゲールと妙子さんにも協力してもらって
 シーニーは必ず黒幕を見付けて」
「…そうやな。あぁ、そうや。
 俺が見付け出さんとな」

シーニーはそう言って静かに微笑んだ。

一寸ちょっと、本気を見せたるわ」
「そうでなくっちゃ!」

同じ様に悲しい筈なのに
ベルデは先程から気丈に明るく振舞っている。
その優しさに救われている自分が居る。
だからこそ、このまま悲しみの底に沈む訳にはいかない。

「運命は変えられる」

シーニーはそう言うと、真っ直ぐに前を見つめた。

「花菜子ちゃん本人は救えんかったかもしれん。
 だが、彼女の両親迄も
 運命の渦に飲まれる訳にはいかんのや」
「だからこその、【通夜】かい。
 そう云うのは直ぐに説明しろっての」

呆れた口調ながらもロッソの目は笑っていた。

「お前一人の力で無理な難題でも
 俺達四人が力を合わせりゃ切り抜けられる。
 …そうじゃないのか?」
「…そうやったな」
「そうよね。私達は【SSSトリプルエス】。
 不可能を可能にして来たNUMBERINGだもの」
「そう云う事だ」

三人は顔を見合わせ、フッと小さく笑った。
例え今、依頼が発生していないとしても
彼等は犯人を逃がす気等
これっぽっちも持っていない。
依頼が入り次第、即実行に移す。
その為に必要な事を済ませるつもりなのだ。

全ては動き出す『その時』の為に。
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