男達が顔面蒼白で必死に逃げている。
壁に映った追跡者の影がゆっくりと彼等を追い
一人、又一人と倒して行く。
まるで恐怖映画の様にも映るが、これは【現実】だ。
自分はネットの情報に乗っただけ。
仲間達と共に現場を見に行っただけ。
其処で記念写真を撮っただけ。
だが、追跡者はそれを【罪】と言った。
「ひっ!!」
漆黒のボディーに赤い光が走っている。
最後まで残った男が何かを叫ぼうとするが
影は彼の喉を右手で掴むと恐ろしい力で握り潰した。
バイクで疾走する暴走族。
すると目の前に人影が浮かんでいる。
何のトリックだと笑いながら
仲間が数人、其方へ向かってスピードを上げた。
次の瞬間。
バイク諸共バラバラになった仲間達の姿に
後ろを走っていた暴走族のリーダーは目を見開いた。
影は空中からゆっくりと降り立つ。
ワイヤーの様な物が張り巡らされており
仲間達はその罠にかかって絶命したのだ。
「巫山戯やがってっ!!」
怒りに駆られバイクを飛ばすリーダーだったが
影はそのままバイクに向かって駆け出し
前輪タイヤに足を掛けると
リーダーの頭部を掴んで回転した。
高速回転に耐え切れなくなった首が
頭部と胴体を切り離すのは想像に難くない。
漆黒のボディーに走る緑色の光。
その影は、震えながらその場で固まっている
暴走族の集団に照準を向けた。
掲示板経由で送られてきた脅迫文。
其処で知り合った数人とは既に連絡が取れない。
恐怖に慄き、自室を飛び出して街へ逃げる。
だが、刺客は直ぐ背後に迫っていた。
漆黒のフルヘルメット。
勿論表情は全く確認出来ない。
時折黄色い光が無機質に走るだけで
不気味さは一層強くなっていた。
逃げなければ。
そう思って擦り抜けようとした瞬間。
その男の生体反応は綺麗に消え去った。
隙を突いて逃げ出せる程 刺客は甘くない。
獲物を
次の獲物の許へと向かう為に。
「後一人……」
シーニーは鬼神の形相で
最後のターゲットの行方を追っていた。
怨掲示板の運営者にして
処刑アンケートスレッドを立ち上げた張本人。
あのアンケートの投票が恣意的な物である事も
シーニーはこの時点で掴んでいた。
「潰したるぞ、今度こそ。
依頼なんざ関係あらへん。
金を受け取ったら最後。
水間がそれを利用して
俺等を追い込むつもりやって事も
こっちは既にお見通しなんじゃ」
解き放たれた復讐の鬼。
タイムリミットは日付変わった今日の正午。
彼はそれ迄に決着を付けようとしていた。