事件ファイル No.9-10

的場一家 惨殺事件・中編

「私の家族を殺した犯人は…NUMBERINGだったの」

* * * * * *

ロッソが豹変した二度目の事件。
それは…同じ研究所内に
的場家一家惨殺事件を起こした犯人が
匿われていた事を知った時だった。

シーニーは単独で事件の真相を追い続け
その犯人がNUMBERINGである事、
所属がこの研究所である事を突き止めたのだ。
後は今現在、どの部屋に潜伏しているのかを掴めれば良い。
ベルデにNUMBERINGとしての最終試験を受けさせると称し
研究員を巧く誘導して犯人を誘き出した。
彼はベルデ自身に決着を付けさせようとしていた。
勿論、彼女にその生命いのちを奪わせるつもりは無く
最初から始末は自分達三人で行う予定だった。

ベルデは怒りに体を震わせながら
シーニーから手渡された拳銃を構え
父の怒りを犯人の左腕に、
母の悲しみを右足に、
そして姉の苦しみを右脇腹に
寸分の狂いもなく撃ち込んだ。

最期の一発を犯人の頭部にと狙いを定めた直後
その先の行動をロッソが止めた。
ベルデにとっては突然の事だった。
当然、彼女は戸惑った表情を浮かべている。

「…ロッソ?」
「此処から先は俺が引き受ける」

その冷めた声にシーニーはロッソの真意を悟った。
只の始末では無い事を。
シーニーはベルデを抱き締めると拳銃を取り上げ
突然 彼女の目を塞いだのだ。

「えっ?」
「見るな」

ゲールが更に気を利かせ
二人をそのまま別室へと誘導した。
強化防音ガラス張りの部屋の中で
ロッソと犯人が向き合っている。
何を話していたのかは聞き取れない。
しかし、激しい殴打音とエリアを揺るがす程の振動が
直後から響き渡った。

その生命を賭けてでも果たしたかった復讐。
漸く叶ったその瞬間にロッソは興奮していた。
初めて見せる悪鬼の表情。
実に楽しそうに拳を叩き付ける様相は
流石のシーニーも眉をひそめる程だった。
ゲールでさえも直視が辛いのか顔を背けた。
ロッソは犯人の体が只の肉片になる迄
殴る事を止めようとはしなかった。
全身に返り血を浴びながら
彼は狂気の笑みを浮かべていた。

* * * * * *

「私はその瞬間を見てない。
 シーニーは今でも、
 私に見せなくて正解だったって言ってる。
 どれ位酷い状況だったのかは
 ゲールが説明してくれたけど…
 今でも、それが本当の事なのか判らないの」
「そう……」
「だけど、鷹矢さんが…
 ロッソが仇を取ってくれて…
 私は漸く、救われた様な気がした」

穏やかな表情で空を見上げる。
その横顔は15歳の少女のものではなく
もっと大人びた女性のものであった。
神秘的な美しさ。

With him彼と共に

「志穂ちゃん……」
「それが、私の【答え】」
「…喜ぶわ。きっと、晋が」

二人は顔を見合わせると
互いにとても嬉しそうに微笑んだ。
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