Act・1-5

NSM series Side・S

「これで何日目の張り込みだ、畜生!」

車の中で山県が吠える。
だが平尾は冷静に
部屋の様子を伺っていた。

「一兵、どうした?
 えらく集中してるじゃないか」
「今回の犯人(ホシ)は…
 結構しぶとそうだからね。
 ちゃんと証拠固めしないと」
「ふ~ん…。
 被害者(ガイシャ)が可愛い女の子だと
 張り切り具合が違うな」
「大将もでしょ?
 でなきゃ
 徹夜で張り込みなんて
 付き合わないじゃない」
「…バレたか」

被害に遭ったのは
一人暮らしの女子学生だった。
何の事件に巻き込まれたのかは
定かではないが
どうも狙われているらしい。

姿無きホシを捕まえる為、
こうして張り込みを続けている訳だ。

* * * * * *

ウトウトと眠る山県をそのままに
平尾は一人部屋を伺っていた。

「…今日も、何事も無いかな?」

時間は午前3時を指していた。
すると。

ガシャン

硝子の割れる音と悲鳴。

「大将!」
「? お、おう!」

二人は車を飛び出し、
学生の部屋へ向かった。

「ホシか?」
「多分…」

走りながら状況を確認し合い、
胸の拳銃を取り出す。

「西部署だ!」

勢いよく銃を構え
山県が部屋に滑り込んだ。

しかし犯人らしく姿は何処にも見えず。

「?」
「あ、君。大丈夫?
 怪我は…」

平尾は学生に駆け寄り、
硝子を破った者の正体を見つけた。

* * * * * *

「じゃあ何か?
 ホシは近所の野良猫だったって訳か」

小鳥遊の言葉に
平尾は恥ずかしそうに頷く。

「気配を感じてたのも
 どうやらそいつの仕業だった
 みたいなんですよ」
「じゃあ玄関の前の生塵は…」
「野良からすればご馳走ですから。
 『求愛』の印に…じゃないっすか?」

山県は呆れ顔で報告する。

「ですので班長。
 俺、寝てきます。
 後は一兵に…」
「大将っ!」
「又始まったよ、
 大将の盥回し…」

「じゃあ一兵。
 報告書はお前に任せる」
「…解りました」

「で、その女子学生は
 その後どうなった?」
「えぇ。
 その野良猫を飼う事にしたそうです。
 まぁ、大家さんも理解してくれたそうで
 仲良く暮らしていくと喜んでましたよ」
「そうか…。
 まぁ、大家の理解があれば
 問題は起こらないだろうな」
小鳥遊は嬉しそうに微笑んでいた。

「4日間の徹夜での張り込み、
 ご苦労さんだったな、一兵。
 報告書は後でも良い。
 先ずはゆっくり休め」
「有り難う御座います、班長!」
平尾もまた嬉しそうに笑みを浮かべ、
深々と会釈をした。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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