Act・1-6

NSM series Side・S

最近は西部署にも
個人用のコンピュータが導入され
得意に扱う者、
持て余す者、
触れようともしない者
様々である。

「メールも頻繁に来てますね」

立花の声に
フムフムと鳩村が顔を覗かせる。

「そうだな」
「事件に関係の有るメールは無い様です」
「そっか。
 まぁ、そんなに真剣に睨めっこするなよ。
 疲れちまうぞ、コウ」
「有り難う御座います、ハトさん…」
「それに引き換え…」

溜息を吐きながら
鳩村は視線を彼の方向に向けた。

* * * * * *

悪戦苦闘する山県と北条。
平尾はテキストを丸めて
睨みを利かせている。

「今時ねぇ、コンピュータも使えない様じゃ
 立派な刑事とは言えないよ?」
「…RSのコンピュータなら
 扱えるんだがなぁ~」
「同じく…」
「グダグダ言わない!!」

平尾は鬼教官のつもりらしい。
バシッと机を叩き、
二人を牽制する。

「とにかく報告書位は
 コンピュータで打ち出せる様に…」
「?」
「どうしたの、大将?」
「何だ、これ?」
「ん?」

平尾が確認する間も無く、
山県の指がクリックする。

瞬間、コンピュータの画面がブラックアウトした。

* * * * * *

「……」
「莫迦ッ!
 コンピュータウィルスだ!!」

鳩村の罵声にも
山県は意味が解らず
オロオロしている。

「大丈夫です。
 他のコンピュータには
 感染してません。
 アンチウィルスソフトを
 導入してましたから…」

「大将……」

小鳥遊の声に
思わず山県は萎縮する。

「お前、あれ程
 『アンチウィルスソフトを入れておけ』と
 釘を指した事…
 まさか忘れた訳じゃないだろうな…」
「あは…あはは……」

「初期化しろ」
「…はい?」
「自力でマシンを復旧させろ。
 『自分のケツは自分で拭け』。
 団長の教えだったな」
「…はい」

「流石は班長…」

鳩村と平尾は
同時に同じ台詞を呟いた。

* * * * * *

「なぁ~、助けてくれよぉ~」

山県の呼び掛けを
全員が無視していた。

「ハト~、一兵~、ジョー、コウ~!
 誰か助けてくれって~~っ!!」
「おやおや、賑やかな」

姿を見せたのは木暮だった。

「どれどれ…何をやらかしたんだ?
 大将さんは…」
「課長!!」
「何やってるんだ?」
「マシンの初期化です…」
「初期化…?
 そりゃまぁ随分と
 大掛かりなヤマを踏んだなぁ~」
「は…ははは……」

「まぁ、頑張れよ」
「…課長?」

木暮は何事も無かった様に
課長室へと姿を消した。

「課長が助けてくれると思った?」
「…甘かった」

鳩村の冷やかしに
山県を頭を抱え込んだ。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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