Act・1-7

NSM series Side・S

「何時から吸ってるんですか?」
「ん?」

いつものように屋上に煙草を吹かしていると
突然背後から声を掛けられた。
立花である。

「先輩って意外と吸うんですよね」
「まぁ…な」

「かなり昔から?」
「一応20歳超えてから」
「一応?」
「そう。俺も警察官だからね」
「成程、そうですね」

フッと目を細め、静かに煙草を口に当てる。
その瞬間だけ、
不思議と表情が緩んで見えた。

「この職場って…
 皆、ヘビースモーカーですよね」
「そうかな」
「そうですよ。
 吸わないのって一兵さんと…」
「あぁ。コウは吸わないな」

北条は煙草を咥えたままだ。

「俺はさ、落ち着くんだ」
「マイルドセブンなんですか?」
「そうだ」
「ずっと?」
「あぁ」

北条はそっと煙草の箱を取り出すと、
それを軽く振って立花に差し出した。

「吸う?」
「…いえ、遠慮します」

クスッと笑みを零し、北条の視線は空を見つめる。

「…先輩?」
「良い天気だな」
「そうですね」
「綺麗な青空だ」

新たな煙草に火を点け、静かに煙を燻らす。

いつもなら、一人でこうして煙草を吸いながら
一体何を考えているのだろう。
どんな物思いに浸っているのだろう。

立花は、ふとそれが知りたくなった。
しかし…きっと彼は答えないだろう。
同じ仲間でありながら。

目の前に立ち聳える壁の高さを感じる立花であった。

* * * * * *

「さて、これでこのヤマも解決!」

御機嫌な山県はそのままSuper Zに乗り込もうとして
ふと視線を後方に合わせた。

サファリに乗り込もうとする人物の傍に駆け寄り、
そのまま何処かへ引っ張っていく。

「ん?」

立花は何事かとその様子を見に行く。

其処では山県と北条が
何かを話しながら煙草を吹かしていた。
自分の分を吸い終えたのか、
山県の手は北条の胸ポケットをゴソゴソと動いていた。

「持ってないのか?」
「切れたんだよ」
「…仕方が無いなぁ。
 俺も給料前で厳しいんだから」

邪険に扱う訳でもなく、
そっと煙草を差し出し、ライターを貸し与える。
その姿が、何かに重なって見えた。

「やっぱり激務の後はこの一服だよな」
「そうだな」

「後は…屋台での一杯とか」
「じゃあ、今晩でも行く?」
「残念。俺、宿直」
「それは残念。じゃあ俺、一兵さんを誘うよ」
「酷いね、それって!」

自分とは違う、自然な会話。
それを羨ましいと思う自分。

「コウ!」

山県が彼に気付き、声を掛ける。

「お前も来いよ!!」

その声に導かれる様に、
立花は駆け足で2人の所へ向かって行った。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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