Act・1-9

NSM series Side・S

「なぁ…」

山県は椅子に腰掛けたまま周囲を見渡す。

「何ですか?」

答えたのは立花だ。

「お前の趣味って何だ?」
「趣味…ですか?」
「そう」
「う~ん、と…太極拳、かな?」
「趣味と実益が見事に一致してるな」

山形は更に周囲を見渡す。

「お、ハト。お前は?」
「俺は多趣味だからね」
「その沢山の中で、どれが一番のお勧め?」
「何でそんな事を聞きたいの?」
「良いから話せ」

「そうだねぇ…。ツーリング、かな」
「一人でもツーリング?」
「要はバイクに乗ってる時っ!!」
「ふぅ~~~ん」

「コウ…。何だ、あれは?」
「解りません……」

鳩村と立花は顔を見合わせて溜息を吐いた。

* * * * * *

「趣味?」

丁度談笑していた平尾と北条は
綺麗に声を揃えた。

「そう、お前等の趣味」
「僕はデートかな」
「相手も居ないのに?」
「…居ますよ!!」

「で、お前は?」

北条は自分に話が振られると思っていなかったらしく
唖然としたまま山県を見つめている。

「ジョー…。
 質問にはちゃんと答えろよ」
「趣味?」
「そうだ」

「…トレーニング」
「それ、趣味?」
「他に何が有るんだよ?」
「ツーリングとか、デートとか……」
「興味無いなぁ……」

「…じゃあ何に興味が有るんだよ?」
「スポーツは全般に興味有るけど。
 見るだけじゃなくて自分でするのも」
「じゃあ今度、一緒に何かやるか?」

平尾はこの遣り取りを見て
何かを察したらしい。

「…阿呆らしい」

呆れ返ったまま、彼はその場を後にした。
残されたのは嬉しそうな表情の山県と
正反対に困惑している北条だった。

* * * * * *

「って、訳」
「何だよ、それ!」

場所は変わって『セブン』内。
平尾は一連の経緯を鳩村に話していた。
その傍らには立花。

「大将さん、ジョー先輩の趣味を聞きたかったのかな?」
「みたいだよ。
 遠巻きに他の人間の事聞き出さなくても
 直接聞けば良いのに」
「全くですよね…」

「聞けなかったんじゃないのか?」
「?」

鳩村はバーボンを舐めながら
ふと視線を照明に向けた。

物憂げな瞳。

「興味が有って聞きたかった、のも有るだろうが。
 大将がそう云う行動に出たのは
 もっと別の要因が有る様に思うんだ」
「別の……」
「要因…?」

「そう。
 アイツをこの世界に長く留めたい。
 そんな所じゃないのかな」

平尾はそれだけで心中を察したのだろう。
瞳を閉じ、静かに頷いている。

「もう二度と…手放したくは無い。
 仲間を、な」
「…そうだね」
「……」

去来するのは『あの瞬間』。
忘れられない、出来事。

立花は、黙ってしまった2人の先輩を静かに見つめていた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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