山県は椅子に腰掛けたまま周囲を見渡す。
「何ですか?」
答えたのは立花だ。
「お前の趣味って何だ?」
「趣味…ですか?」
「そう」
「う~ん、と…太極拳、かな?」
「趣味と実益が見事に一致してるな」
山形は更に周囲を見渡す。
「お、ハト。お前は?」
「俺は多趣味だからね」
「その沢山の中で、どれが一番のお勧め?」
「何でそんな事を聞きたいの?」
「良いから話せ」
「そうだねぇ…。ツーリング、かな」
「一人でもツーリング?」
「要はバイクに乗ってる時っ!!」
「ふぅ~~~ん」
「コウ…。何だ、あれは?」
「解りません……」
鳩村と立花は顔を見合わせて溜息を吐いた。
「趣味?」
丁度談笑していた平尾と北条は
綺麗に声を揃えた。
「そう、お前等の趣味」
「僕はデートかな」
「相手も居ないのに?」
「…居ますよ!!」
「で、お前は?」
北条は自分に話が振られると思っていなかったらしく
唖然としたまま山県を見つめている。
「ジョー…。
質問にはちゃんと答えろよ」
「趣味?」
「そうだ」
「…トレーニング」
「それ、趣味?」
「他に何が有るんだよ?」
「ツーリングとか、デートとか……」
「興味無いなぁ……」
「…じゃあ何に興味が有るんだよ?」
「スポーツは全般に興味有るけど。
見るだけじゃなくて自分でするのも」
「じゃあ今度、一緒に何かやるか?」
平尾はこの遣り取りを見て
何かを察したらしい。
「…阿呆らしい」
呆れ返ったまま、彼はその場を後にした。
残されたのは嬉しそうな表情の山県と
正反対に困惑している北条だった。
「って、訳」
「何だよ、それ!」
場所は変わって『セブン』内。
平尾は一連の経緯を鳩村に話していた。
その傍らには立花。
「大将さん、ジョー先輩の趣味を聞きたかったのかな?」
「みたいだよ。
遠巻きに他の人間の事聞き出さなくても
直接聞けば良いのに」
「全くですよね…」
「聞けなかったんじゃないのか?」
「?」
鳩村はバーボンを舐めながら
ふと視線を照明に向けた。
物憂げな瞳。
「興味が有って聞きたかった、のも有るだろうが。
大将がそう云う行動に出たのは
もっと別の要因が有る様に思うんだ」
「別の……」
「要因…?」
「そう。
アイツをこの世界に長く留めたい。
そんな所じゃないのかな」
平尾はそれだけで心中を察したのだろう。
瞳を閉じ、静かに頷いている。
「もう二度と…手放したくは無い。
仲間を、な」
「…そうだね」
「……」
去来するのは『あの瞬間』。
忘れられない、出来事。
立花は、黙ってしまった2人の先輩を静かに見つめていた。
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