Act・10-2

NSM series Side・S

「Don't forget! I will surely take revenge!!
 (忘れるな! 必ず復讐してやる!!)」

逮捕され、連行されていく中
あの男はそう暴言を吐き捨てた。
その場に居た隊員全てに、だろうと当時は思った。
だが…どうやらそうではなかったらしい。

ターゲットは最初から【俺】だったのだ。

甦ってくる、当時の記憶。
スナイパーの名前、顔貌。
だが、所詮は奴も使い捨て。
確か獄中死したと報道された。

「駒は幾らでも居る。
 だから何度でも俺を襲える。
 奴はそう言いたいんだろうが…」

意を決して鳩村はカタナに乗った。
全てと決着を付ける為に。
過去を清算する為に。

「青梅埠頭4丁目。丁度倉庫街だな。
 確かにあの場所なら少々のドンパチも可能か」

口元に笑みを残したまま
鳩村は颯爽と街を駆け抜けていった。

* * * * * *

一方その頃。

小鳥遊は七曲署に出向き、
其処で再度資料を確認していた。
失踪前に北条が見たという資料だ。

「切っ掛けはこの事件。
 1年3ヶ月前、西部署の捜査3課宛に
 爆破予告の脅迫状が届けられた。
 狙われたのは…
 代々木公園に招かれた移動遊園地の観覧車内。
 全力を挙げて捜査をしたが
 結局爆発物らしき物は見付けられなかった。
 犯人からの追加要求も無く、
 事件は有耶無耶のまま…幕を閉じた」

今手元にある資料を一旦戻し、
小鳥遊はその隣にある資料を手に取った。

「犯人の狙いは…この事件の隠遁」

事件調書を書き上げたのは西条ではない。

「書いた本人に聞くのが一番手っ取り早いな」

小鳥遊は資料を手に
真っ直ぐ捜査1課の部屋へ向かった。
その途中で擦れ違う、目的の人物。

「喜多さん!」
「おや、小鳥遊さん?
 珍しい人が居るもんだ」

喜多は火を点ける前の煙草を口に咥えていた。
このご時世ではそのまま着火する事も叶わず
恐らくは喫煙室へと直行の途中だったのだろう。

「コイツの件で一寸
 御意見を頂戴したいと思いましてね」
「あぁ…、それかぁ…」

喜多は調書の表紙を見た途端、表情を曇らせた。
相当嫌な思いをしながら書き上げたのだろう。

「お宅の北条君が行方不明だって聞きましたけど
 もしかして…何か関係が有りそう、とか?」
「少なくとも私はそう睨んでます」
「成程ねぇ…」

喜多は口から名残惜しそうに煙草を放し、
愛用のシガレットボックスへと戻した。
その眼は先程とは打って変わって
非常に好戦的であった。

「越境捜査って認識で良いんですかね?」
「勿論です。其方のボスには
 私からちゃんと話をさせて頂きますから」
「それじゃウチの精鋭も出しましょうか。
 まぁ、ボスが首を縦に振ったらって話ですけど。
 正直、この件に関しては
 かなり煮え湯を飲まされたんでね」
「では今度こそ引導を渡してやりますか」
「良いですね~!」

小鳥遊は喜多と顔を見合わせると
実に楽しそうに笑った。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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