Act・10-4

NSM series Side・S

「え? 通れないの、此処?」
「そんな急に言われても困るよ!」
「どう云う事なの、刑事さん?!」

検問で足止めされたドライバー達は
口々に交通課の刑事達に不満をぶつけている。
幾ら罵られようとも
上からの命令は絶対である。

『青梅埠頭4丁目付近の立ち入り禁止』

通達された以上、それは厳命である。
ネズミ一匹、通す訳にはいかない。

たとえ、その先に何が有るのかを
知る事が無かったとしても。

* * * * * *

「やっと会えたな」

潮風が頬に触れる。
鳩村はサングラスを外し、
目の前の人物を静かに見つめた。

「随分捜したぜ、ジョー」
「あぁ。なかなか楽しかったろ?」
「笑えないJOKEだ」
「ふっ…。確かにな」

肩の力が抜けたのだろうか。
北条の表情は窶れているにも関わらず
随分とスッキリしている様にも見えた。

「俺もアンタも、過去を背負い過ぎた」

北条は笑っている。

「過去は清算しなければならない」
「ジョー?」
「俺達自身の手で」

北条の目の色が不意に変わった。
その手には改めてS&W M39が握られる。

「覚悟は出来ているんだろう?
 清算しよう」
「…どうしてもか、ジョー?」
「あぁ。…『一発で仕留める』」
「!!」

北条の今の一言に、鳩村は鋭く反応した。
そして彼も又、
愛用のコルト・パイソンの4インチPPCカスタムを構えた。

「始めようか」

2人は銃を構え、対峙した。
時間が止まったかの様な静寂。
その瞬間、二人は何を思い 考えていたのか。
それは誰にも分からない事だった。

* * * * * *

「警察だ! 神妙にお縄を頂戴しろぃ!!」

山県の怒号が部屋中に響き渡る。
その場に居た男達が険しい表情で
乗り込んで来た山県を睨み付けた。

「おぅ、西部署の刑事さんよ。
 令状はちゃんと持ってんだろうな?」
「令状が無きゃ不当逮捕っすよ~。
 解ってんですかねぇ~?」

その直後、山県の後ろから
一筋の影がさっと動いた。
そして一人の男の顔に
一枚の紙を乱暴に押し付ける。

「西部署だけじゃないんだよ、
 この件で令状持ってんのはな!」
「何だ、このチビ?」
「誰がチビだっ?!」
「あ~ぁ、命知らずだねぇ~。
 DJにその一言は禁句だっての」

喜多は笑いながら、DJこと太宰の乱闘を眺めている。
余裕があるというよりも他人事の様なその態度に
山県は半ば呆れ顔であった。

「こっちの現場は抑えた。
 後は平尾刑事と立花刑事に期待しよう」
「アイツ等なら大丈夫だって」

山県の返答に喜多は満足そうに頷いた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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