Act・2-1

NSM series Side・S

「あれ?」

セブンで朝刊を見ながら
思わず立花が声を上げた。

「何だ、コウ?」
「ハトさん…兄貴が出てる」
「何で?
 何かやったのか?」

「『痴漢撃退』…だって」
「へぇ~やるじゃん、二枚目」

山県はトーストを頬張りながら
珈琲の追加をオーダーする。

「兄貴、喧嘩は強いんだけど…
 無茶はしない方が…」
「優しい弟をお持ちで。
 羨ましいね、龍の奴」

煙草を嗜みながら
鳩村の目はとても優しかった。

* * * * * *

「ですから、取材は勘弁下さい」

マネージャーの坂上 玲が
懸命にマスコミ対策をするが
相手はなかなか黙らない。

「良いよ、アーチ。
 インタビューに応じる。
 その代わり、
 応じたら速やかにお引取りを。
 近隣の方に迷惑は掛けたくないんです」

高崎は笑顔で応対した。

「龍…」
「大丈夫。
 スケジュールには響かせないから」

「では…早速」

マスコミの一人が質問を浴びせる。

「痴漢と言うのは…」
「撮影中、集まってくれたファンの間に
 紛れ込んでいたんです。
 それを偶々見つけて、
 警察に突き出した。
 俺がやったのはそれだけですよ」

「それだけって…」
「大切なファンを守りたい。
 当たり前の行為です」

高崎は笑顔で答えている。
本心からファンを愛している。
それを意味する笑みだ。

マスコミ各人も納得したらしい。
記事にするべくと
今度は我先に現場を後にする。

「ま。こんなもんかな?」
「龍らしいな」

坂上は苦笑を浮かべた。

「さぁ、無駄な時間食っちまった。
 次の現場に向かうぞ」
「OK、アーチ」

龍は軽やかにステップを踏むと
後部座席に乗り込んだ。

* * * * * *

「どの紙面も
 『高崎 龍、痴漢を撃破』だよ。
 凄いね~マスコミも」

女性誌を見ながら
山県は呑気にソファに寝転んでいる。

「誰が買ったの?」
「これか? 一兵」
「一兵さん…」

「だってさ、情報収集は
 モテる為の第一歩なのよ?
 解る、ジョー?」
「解りたくもありません」

「お前はそれだから
 女が出来ないんだよな」
「その前に大将。
 結婚してみたらどうです?
 まぁ、『出来れば』の話だけど」
「ジョーっ!!」

山県は雑誌を放り投げ、
狭い刑事部屋で
北条に挑みかかる。

それを子供を相手にするかの様に
彼はヒョイヒョイとかわしていく。

「チョコマカ動くな!
 当たらねぇだろっ!!」
「当たらないように避けてるんすよ!」
「もう…」

平尾は投げ出された雑誌を手に取り、
埃を叩いた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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