立花は道端に咲く
シロツメグサを眺めながら
ふとそんな事を考えていた。
『そう言えば…』
ふと子供の頃を思い出した。
兄、隆と一緒になって
夕方遅くまで四葉のクローバーを探した事。
結局は見付からなかった
四葉のクローバー。
だが、二人は自分の力で
夢を掴み取った。
あの日、約束した言葉。
「クローバーに頼らなくても
夢は叶えられるさ」
兄の言葉がとても頼もしかった。
その言葉を胸に、
自分は頑張ってきたつもりだ。
そして…。
「四葉じゃなくても…
綺麗なもんだな」
背後からふと声をかけられた。
鳩村だ。
「…吃驚した」
「悪い。
驚かすつもりは無かったんだが」
「あ、急ぎましょうか?」
「いや…」
鳩村はそう言うと
立花と同じような格好で
しゃがんで道端を眺めた。
「逞しいな、野草は。
踏まれても踏まれてもへこたれない」
「…はい」
「コウ」
「はい?」
「そんな刑事になれ。
踏まれても踏まれても
弱音なんか吐かない、
雑草根性を持った刑事になれ」
「ハトさん…」
「それが『大門軍団』だ」
鳩村はことある毎に
『大門軍団』を主張する。
実際大門の指揮下に居なかった立花を
それでも「仲間だ」と認めている証拠か。
「はい!
『大門軍団』の一員として
恥ずかしくない刑事になります!」
「その意気だ。
…頑張れよ、コウ」
「有り難う御座います、ハトさん」
「じゃあ、行くか」
「はい!」
二人は静かにその場を後にした。
シロツメグサは
風に揺られながら
二人の後姿を見送っていた。
「クローバーか…」
押し花となった四葉のクローバー。
ファンレターの贈り物に
高崎はふと笑みを浮かべた。
「有り難いプレゼントだ」
「お、洒落た栞だな。
お手製?」
「あぁ。
俺の為にこのクローバーを
探してくれたんだろうな」
「有り難いな…」
「あぁ…。
このクローバーに誓って、
これからも夢をプレゼントして
いかないとな」
「そう云う事だ」
坂上は笑顔で手帳を広げた。
「今日のスケジュール」
「OK。
先ずは…」
二人は仕事の打ち合わせを始めた。
熱の入った会議である。
高崎は栞をそっと
自分のシステム手帳に挟んだ。
『功。お前との約束、
今でも覚えてる。
お互いに…夢、掴んだな。
だけど勝負はこれからだぜ』
高崎は微笑みながら
栞を見つめた。
お題提供:[刑事好きに100のお題]