Act・2-2

NSM series Side・S

何時から『幸運のシンボル』と呼ばれたのか。

立花は道端に咲く
シロツメグサを眺めながら
ふとそんな事を考えていた。

『そう言えば…』

ふと子供の頃を思い出した。
兄、隆と一緒になって
夕方遅くまで四葉のクローバーを探した事。
結局は見付からなかった
四葉のクローバー。

だが、二人は自分の力で
夢を掴み取った。

あの日、約束した言葉。

「クローバーに頼らなくても
 夢は叶えられるさ」

兄の言葉がとても頼もしかった。
その言葉を胸に、
自分は頑張ってきたつもりだ。

そして…。

* * * * * *

「四葉じゃなくても…
 綺麗なもんだな」

背後からふと声をかけられた。

鳩村だ。

「…吃驚した」
「悪い。
 驚かすつもりは無かったんだが」
「あ、急ぎましょうか?」
「いや…」

鳩村はそう言うと
立花と同じような格好で
しゃがんで道端を眺めた。

「逞しいな、野草は。
 踏まれても踏まれてもへこたれない」
「…はい」
「コウ」
「はい?」

「そんな刑事になれ。
 踏まれても踏まれても
 弱音なんか吐かない、
 雑草根性を持った刑事になれ」
「ハトさん…」
「それが『大門軍団』だ」

鳩村はことある毎に
『大門軍団』を主張する。
実際大門の指揮下に居なかった立花を
それでも「仲間だ」と認めている証拠か。

「はい!
 『大門軍団』の一員として
 恥ずかしくない刑事になります!」
「その意気だ。
 …頑張れよ、コウ」
「有り難う御座います、ハトさん」
「じゃあ、行くか」
「はい!」

二人は静かにその場を後にした。

シロツメグサは
風に揺られながら
二人の後姿を見送っていた。

* * * * * *

「クローバーか…」

押し花となった四葉のクローバー。
ファンレターの贈り物に
高崎はふと笑みを浮かべた。

「有り難いプレゼントだ」
「お、洒落た栞だな。
 お手製?」
「あぁ。
 俺の為にこのクローバーを
 探してくれたんだろうな」

「有り難いな…」
「あぁ…。
 このクローバーに誓って、
 これからも夢をプレゼントして
 いかないとな」
「そう云う事だ」

坂上は笑顔で手帳を広げた。

「今日のスケジュール」
「OK。
 先ずは…」

二人は仕事の打ち合わせを始めた。
熱の入った会議である。

高崎は栞をそっと
自分のシステム手帳に挟んだ。

『功。お前との約束、
 今でも覚えてる。
 お互いに…夢、掴んだな。
 だけど勝負はこれからだぜ』

高崎は微笑みながら
栞を見つめた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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