Act・2-3

NSM series Side・S

「全く、東部署の野郎…」

珍しく北条が荒れている。

所轄の問題で
東部署と一悶着遭ったのだ。
東部署出身だから、と
北条が交渉に行ったのだが
門前払いを食らって帰ってきたのである。

「お前、本当に元東部署?」

鳩村が胡散臭げに
北条を見つめる。

「白バイ隊から東部署に配属になりましたよ。
 直ぐに課長に引っこ抜かれましたけどね。
 その後、また出戻りしたんですが…」
「西部署暦の方が遥かに長いんだ。
 もう無理だよ」

平尾が助け舟を出す。

「そもそも、
 所轄を超えて捜査ってのが
 無茶な発想なんだよ」
「七曲署とは上手くいくんだがな」
「大将…。
 七曲署は良心的なの」
「けっ!」

山県は面白くないと顔を顰めた。

「頭が固くていけねぇな、東部署は」
「でも逆の立場なら…
 大将さん、許せます?」
「う……」
「『手柄を横取りされた』とか言って
 怒ったりしません?」

立花の問い掛けに
山県は返答出来なかった。

* * * * * *

東部署の方は暗礁に乗り上げたようだ。
その事情は小鳥遊から知らされた。

「そら見ろ」

悪態を吐いた山県の頭部に
小鳥遊からファイルのチョップが飛んだ。

「口を慎め」
「だって班長っ!!」
「口を動かさずに手を動かせ。
 お前の提出分、
 まだ受け取ってないぞ」
「へっ?」
「この間の始末書。
 今度は逃げられんからな」
「…ジョーの奴」

山県は北条を睨み付けるが
彼は目線を逸らしている。

「で、班長。
 暗礁に乗り上げた事件、
 このまま東部署に任せるんですか?」

鳩村の質問に
小鳥遊は苦笑を浮かべている。

「警視庁が許さないだろう。
 ホシを挙げなきゃ事件は終わらない。
 どう云う意味か、解るよな?」
「じゃあ…」
「警視庁から直々の命令だ。
 『所轄を問わず、今回の事件は西部署に任せる』
 との事だ」
「誰のお力ですか?」
「言わずもがな、…課長だ」
「流石…」

「じゃあさっさと片付けて来い」
「解りました!」

「あぁ…大将は居残りだ。
 お前は始末書が先」
「班長……」

山県は涙目だった。

* * * * * *

「今回の事件、
 最大の敵は『所轄』でしたね」

事件を無事解決し
立花はそう呟いた。

「まぁな。
 縄張り争いっての?」
「ヤクザと変わらないっすよ、
 そんな言い方じゃ」
「そうか…」

鳩村は美味そうに煙草を吸いながら
空を見上げた。

「任務完了。
 班長にそう伝えておくか!」

平尾は張り切って無線を繋いだ。

「あ、こちら一兵で…」
『事件終わったんだったら
 さっさと帰ってこんかいっ!!』

待っていたのは小鳥遊の労いの言葉では無く
山県の怒鳴り声だった…。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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