Act・2-5

NSM series Side・S

「DNA鑑定に回すしかないな」

鳩村は深い溜息を吐きながら
足元の仏を見つめている。

「こりゃ酷いわ…」
「う…食欲減退……」
「一兵さん、デリケート過ぎ」
「ジョー…。
 お前、よく平気で見てるね…」
「慣れてますから」
「慣れるなよ…」

「はいはい、漫才はそれ位にしろ」

山県が平尾の肩をポンポンと叩く。

「遺体の損傷が激しいですね。
 確かにDNA鑑定は有効です」
「だろう、コウ?
 後は歯形か…。
 この仏さんの身元が判らないんじゃ
 ホシの挙げようが無い」

鳩村は万歳状態で辺りを見渡す。

「犯行現場は…
 此処じゃないな」
「あぁ。
 焼け跡が無い。
 遺体を移動させたんだろう」
「大将もそう思う?」
「だってそうだろ、鳩村君?
 こんな目立つ所に遺体置くかね」
「ごもっとも」

「はぁ~ロクさんが居てくれたらねぇ…」
「ロクさん、復顔技術凄いッすからね」
「お前、そう言えばロクさんと仲良かったな。
 ジョー、ロクさんに頼んでくれよ」
「…判りましたよ」

野暮な事を言ったと
北条は舌を出した。

* * * * * *

「はい、差し入れ」
「おぅ…」

ロクさんこと国立は
夢中で復顔作業を施している。
それを黙って見つめる北条。
長い時間が経過していた。

「…聞き込みに行かなくて大丈夫なのか?」

不意に国立が問いかける。

「…えぇ」
「珍しい。
 お前さんがサボりか?」
「いや、そう云う訳じゃ…」

「なら情報を集めてきてくれ。
 此処に居ても何も始まらないだろう?」
「…お邪魔ですかね?」
「其処までは言わんが…
 仏さんは早くホシを挙げてくれる事を
 願っているような気がしてな」
「…解りました。
 行ってきます」

北条は深々と会釈し、
国立の部屋を後にした。

「後は科学捜査研究所の
 DNA鑑定待ちだな。
 歯形からの手がかりは
 ハト達が巧くやってくれるだろう…」

国立はそう呟くと
再び作業に没頭した。

* * * * * *

新しい技術と昔からの技術。
この二つの技術が融合し、
漸く被害者の素性が明らかになった。

こうなれば犯人逮捕も容易い。

「『大門軍団』の一員として、
 私もまだまだ健在ですかな?」

そう言って笑う国立に
小鳥遊は同じ様に笑顔で答えた。

「勿論です。
 ロクさんの力は必要不可欠ですよ」

「…団長もよくそう言ってくれてました。
 貴方は団長に似ている…」
「えっ?」

「ハト達も解っているんでしょう。
 だから素直に貴方の指示に従っている」
「ロクさん…」

「貴方は『団長』では無い。
 だが、貴方じゃないと駄目なんです。
 彼等を導いてやれるのは
 貴方しか居ない」

国立はそう言うと
軽く小鳥遊の肩を叩く。

「リラックス、リラックス!
 肩に力を入れないで
 深呼吸、深呼吸……」
「は、はい……」

小鳥遊は言われるままに
深呼吸を繰り返していた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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