Act・2-8

NSM series Side・S

「へぇ、珍しい。
 ピアスしてるんだ…」

街で偶然会った。

北条は興味深そうに
高崎の耳元を見つめている。

「興味有るのか?」
「…別に。
 只、お前がピアスなんて
 珍しいからさ」

「お前は刑事のクセに
 常にペンダント着用だな」
「これ?」

北条はそう言うと
そっと愛用のペンダントを摘み上げる。

「誰に貰ったんだ?
 恋人?」
「…ん、まぁそんな感じ」

「男?」
「…何で『男』限定なんだよ?」
「お前が女と付き合った事無いのは
 情報として持ってるんでね」
「…コウか?」
「いや、『Top』の探偵二人組」
「…最低」


高崎は北条のペンダントトップが気になった。
ロケットなのである。

「最愛の人の写真でも入れてる訳?」
「ノーコメント」

無愛想な北条の台詞に
高崎は却って興味を抱いた。

* * * * * *

「グラビア撮影はこんなもん?」

一通りの撮影を終え、
高崎は坂上に尋ねる。

「予定ではね。
 でもカメラマンからのリクエストで
 後5~6枚程
 スチールを希望してるみたい」
「良いのが無かったかな?」

鏡を覗き込みながら
高崎はピアスに触れる。

「この衣装には似合わなかったかな?」
「…う~ん。
 確かに、お前のイメージとは
 少し違うかも」

「…なぁ、アーチ?
 打診しても良いかな?
 もう少し撮り直し」
「え?」

「ピアスを変えてみたい。
 もっと俺らしい奴に。
 スタイリストと相談して、
 撮り直しはそれからで…」
「成程ね」

何処かで納得していないのが
写真に表れていたのかも知れない。
この衣装のオーダーはカメラマンだが
高崎のイメージとはズレを感じていた。
写真は正直である。

「OK。ソッチは俺に任せろ。
 お前は『高崎 龍』として
 相応しいピアスを見付けておけよ」

坂上は笑っていた。

何処までも追求するその姿勢が好きだ。
コイツの為なら何でもしてやろう。
マネージャーとして、
友人として、
仲間として。

「愛してるよ、アーチ」
「バ~カ」

二人はふざけ合いながらも
お互いの存在に感謝していた。

* * * * * *

「で、出来上がった写真集がコレか」

鳩村は立花から受け取った写真集を
興味深そうに眺めている。

「流石はプロだな。
 見せ方が芸術的だ。
 それに…」
「え?」

「良いセンスしてるな。
 特にこのシルバーピアス」
「…兄さん、喜びますよ。
 結構悩んだそうです。
 其処に行き着くまで」

「アーティストだね、龍は」
「そうですね。
 仕事に妥協は許さない、
 そんな人ですから。
 アーチも」
「…そして、お前もな」

鳩村のウィンクに
立花は静かに微笑む。

「皆も見てみるか、龍の新作」

鳩村はそう言うと
暇を持て余している仲間達に声をかけた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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