「…そうだね」
「ん? お前も?」
「あぁ。モンタージュもカラーじゃ駄目なんだよ。
せめてモノクロ。
それでも似顔絵には敵わないと思う」
「…どうしてなんだろうな」
「記憶に直接刺激を与えるからじゃない?」
「成程ね…」
「俺もさ。写真を見てるだけじゃピンと来なくて。
でも似顔絵だと割と早く思い出せる」
北条はそう言うと、山県が食べている焼飯を
ヒョイとスプーンで掬い上げた。
そのまま自分の口に運ぶ。
「ラーメンじゃ足りないんだろう」
「まぁ…ね」
「お前も焼飯にすれば良かったじゃないか」
「ラーメンが食いたかったんだよ」
「…この餃子も食うか?」
「……うん」
相当腹が減っているのだろう。
口とは裏腹に、嬉しそうに餃子に齧り付く姿を見ていると
山県はそれ以上何も言えなかった様だ。
「モンタージュが進んで、
最近は似顔絵描きの姿も減ったよ」
平尾はそう言いながら、調書を書き上げていた。
「そうなんだな」
「僕も似顔絵の方が好きだな」
「お前も?」
「うん。まぁ…これは好みだよね」
「…似てるよな」
「何が?」
「お前とジョーってさ、
何か好みとか嗜好が似てない?」
「それを言うなら大将も
ハトさんとよく似てるけどね」
「そうなの?」
「うん。これはジョーもよく言ってる」
「へぇ……」
山県は盛んに感心しながらお茶を飲んでいた。
「温かみを感じるって…」
平尾のふと口にした言葉が妙に心に響く。
「それ、誰が?」
「…あぁ、独り言」
平尾は言葉を濁した。
彼らしくないその仕草に、山県は盛んに首を傾げた。
だが、どんなにその後問い詰めた所で
平尾からは何も回答をもらえなかったのだが。
俺が知らない事…まだまだ沢山有るな。
まぁ、俺だけじゃないんだろうけど
そう云う事に気付かされると
何だか…堪らなくなる。
あの頃と変わっていないと思っていたのは
俺だけだったんだろうか。
変わってしまった。
何もかもが、大きく変わってしまったと思う。
しかし、変わらなかった部分もある。
俺は多分その部分に縋っているのかも知れない。
あの頃を懐かしく振り返ってしまうのは
俺も年を取ったって事かな?
俺が物憂げに煙草を吸っていると
ふと傍に誰かの気配を感じた。
「何してんの?」
「…別に」
「俺も煙草吸うかな…」
俺の気持ちに何処まで気付いてるのやら。
ジョーの奴、不思議そうな顔を浮かべながら
コッチを見てやがった。
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