Act・3-5

NSM series Side・S

「おや?」

西條の目に或る人物が映った。

「一兵じゃないか。
 へぇ…デートかね?」

ファースドフード店に消えていくその姿を
微笑ましく見守っていると
不意に無線が入る。

「…はいはい。
 多分喜多さんだな……」

西條はマンウォッチングを諦め、
仕事に戻っていった。

* * * * * *

「一兵がデートっ?!」
「声が大きいって、大将」

後日。
某喫茶店内。

西條は鳩村を呼び出したかったのだが
何故か現れたのは山県だった。

「何でお前が此処に居るのか不思議だ」
「呼び出しておいて、よくもまぁ…」

西條は諦めたのか、
珈琲を一気に飲み干すと
身を乗り出した。

「で、一兵だよ。
 アイツ、ファーストフードに入って行ったんだ。
 然も急ぎ足で」
「…へぇ」

「何か有ると思わないか?」
「一兵の場合、
 ファーストフード店は
 馴染みの店だぞ。
 …普通に」
「…そうなの?」
「…違うの?」

西條はニヤリを笑みを浮かべる。

「普通に飯なら
 俺にだって解るよ~!!」
「不気味な奴だな…」

山県は呆れつつも
西條の思惑に乗っている事に気付いていない。

「それで相談なんだが、
 山県君…」
「…何ですかな、西條君」

男同士の密談は
かなり周りに
怪しい雰囲気を醸し出していた様だ。

* * * * * *

「でさ、
 お前が一番一兵と親しいから…」
「……」

北条は呆れ返って
口をあんぐりと開けたままだ。

「アイツが女の話したら
 俺にちょ~~~っとだけ
 流して欲しいんだけど、情報」
「…家出少女の補導話で良ければ」
「はぁ~??」

「情報料」

北条はそう言って手を突き出してくる。

「…幾ら?」
「1万円」
「高ッ!!」

「値切り無し」
「…お前は鬼かっ?!」

「神父の風上にも置けない人間に
 『鬼』呼ばわりされたくない」

北条はびた一文負けない気らしい。

「…今の無し。
 聞かなかった事にしてくれ」

山県はそう言うとそそくさと逃げ出した。

* * * * * *

「西條……」
「あ、大将!」

西條はニコニコ顔で
山県を出迎える。

「何そのたんこぶに青痣?
 診てあげようか?」
「お断りじゃ」

山県の怪我は…言わずもがな。

「で、一兵の件だが」
「あぁ。
 本人から聞いた」
「はぁ~~~?」

「家出少女の面倒を見てたんだって?
 然も小学生。
 そりゃファーストフード店ですわな」
「…西條君?」

「もう少し色気の有る話かと期待したんだが
 期待外れだったね、大将?」
「…おい」

「じゃあまた何か浮いた話でも有れば
 俺を呼んでよ!」
「待てや、コラァーーーッ!!」

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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