西條の目に或る人物が映った。
「一兵じゃないか。
へぇ…デートかね?」
ファースドフード店に消えていくその姿を
微笑ましく見守っていると
不意に無線が入る。
「…はいはい。
多分喜多さんだな……」
西條はマンウォッチングを諦め、
仕事に戻っていった。
「一兵がデートっ?!」
「声が大きいって、大将」
後日。
某喫茶店内。
西條は鳩村を呼び出したかったのだが
何故か現れたのは山県だった。
「何でお前が此処に居るのか不思議だ」
「呼び出しておいて、よくもまぁ…」
西條は諦めたのか、
珈琲を一気に飲み干すと
身を乗り出した。
「で、一兵だよ。
アイツ、ファーストフードに入って行ったんだ。
然も急ぎ足で」
「…へぇ」
「何か有ると思わないか?」
「一兵の場合、
ファーストフード店は
馴染みの店だぞ。
…普通に」
「…そうなの?」
「…違うの?」
西條はニヤリを笑みを浮かべる。
「普通に飯なら
俺にだって解るよ~!!」
「不気味な奴だな…」
山県は呆れつつも
西條の思惑に乗っている事に気付いていない。
「それで相談なんだが、
山県君…」
「…何ですかな、西條君」
男同士の密談は
かなり周りに
怪しい雰囲気を醸し出していた様だ。
「でさ、
お前が一番一兵と親しいから…」
「……」
北条は呆れ返って
口をあんぐりと開けたままだ。
「アイツが女の話したら
俺にちょ~~~っとだけ
流して欲しいんだけど、情報」
「…家出少女の補導話で良ければ」
「はぁ~??」
「情報料」
北条はそう言って手を突き出してくる。
「…幾ら?」
「1万円」
「高ッ!!」
「値切り無し」
「…お前は鬼かっ?!」
「神父の風上にも置けない人間に
『鬼』呼ばわりされたくない」
北条はびた一文負けない気らしい。
「…今の無し。
聞かなかった事にしてくれ」
山県はそう言うとそそくさと逃げ出した。
「西條……」
「あ、大将!」
西條はニコニコ顔で
山県を出迎える。
「何そのたんこぶに青痣?
診てあげようか?」
「お断りじゃ」
山県の怪我は…言わずもがな。
「で、一兵の件だが」
「あぁ。
本人から聞いた」
「はぁ~~~?」
「家出少女の面倒を見てたんだって?
然も小学生。
そりゃファーストフード店ですわな」
「…西條君?」
「もう少し色気の有る話かと期待したんだが
期待外れだったね、大将?」
「…おい」
「じゃあまた何か浮いた話でも有れば
俺を呼んでよ!」
「待てや、コラァーーーッ!!」
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