Act・4-2

NSM series Side・S

パトロールをしていると
気分転換が欲しくなる。

「喉渇いたな。
 サテンに寄る時間はねぇし…」
「珈琲で良いなら販売機有りますよ」
「じゃあ奢ってくれる?」
「…はいはい」

車を止め、徐に自動販売機に向かう。
暫く腕を組んで立ち止まったまま悩む。

「どうした?」

車の中から声を掛けると
酷く頼りなく振り返る表情が。

「どうしたんだよ?」
「珈琲…売り切れてた」
「…それ以外でも良いよ」

もはや溜息しか出ない二人。
不安げに顔を見合わせるだけしか出来なかった。

* * * * * *

「可愛い所有るじゃない」

その話を山県から聞き、
平尾は眼鏡を拭きながら微笑んだ。

「お前と一緒の時って
 そんな事あるのか?」
「良くある事だよ」

平尾は実に慣れたものである。
付き合いが長いからなのだろう。

「…そうか」
「どうしたの、大将?」
「何でもない……」

山県の後姿を見送りながら
平尾は何となく彼の心情を察してしまった。

* * * * * *

「珈琲1つで大げさな…」
「でしょ?」

こう云う話をする相手は
昔から自ずと決まってくるものだ。

「相変らず忙しい奴だな、一兵」
「そうは言ってもね、
 誰かが気を配らないと駄目でしょ?」
「…そうだな」

鳩村は静かにグラスを傾ける。

「要らぬ心配、と行きたいところだな。
 もしかすると、俺達だけが
 変に気を回しているだけかも知れないし」

鳩村は静かに続ける。

「俺達だって…色んな経験をしてきた。
 違うか?」

「…まぁ、ね」

平尾はそっと眼鏡を直す。

「でも、さ」
「ん?」

「見ていたいんだよ、きっと」
「何を?」
「『あの頃』をさ」
「…一兵」

「良くも悪くも
 ジョーはあの時代を見せてくれてる。
 それが嬉しいんだ」
「…そうか」

平尾の気持ちが解らない訳ではない。
羨ましいのかも知れない。

平尾は、はっきりと自分の意見を述べる事が出来る。
過去を堂々と振り返る事も出来る。
それが彼の『強さ』なのかも知れない。

「…本人には言わないでおくかな?
 調子に乗ると拙いし」
「…何?」
「こっちの独り言」

鳩村はそう言って笑った。

* * * * * *

「はい、大将」

北条が投げて寄越したのは
よく冷えたスポーツドリンクだった。

「ん?」
「喉渇いたかと思って…」
「…態々、俺に?」
「あれ、要らなかった?」
「いや…貰うよ。
 有難う……」

気にしてくれていたのだろうか。
そう思うだけで
ふと嬉しくなってしまう山県と
何故そんなに喜んでいるのか解らない北条。

そんな二人を鳩村と平尾が優しく見守っていた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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