Act・4-2

NSM series Side・S

「あれ、ジョーは?」

山県は刑事部屋に顔を出すと
辺りをキョロキョロと見渡した。

「研修」
「何の?」
「本庁」
「? 何か有ったっけ?」

山県は何も覚えていないらしい。
思わず天を仰ぐ、上司の小鳥遊。

「お前な…。
 ジョーがSATの研修に2週間行く事になったと
 ちゃんと説明しただろうが」
「あれ、今日からでしたっけ?」

「お前が渋るからアイツが行く羽目になったんだけどな」

鳩村は相変らず英字新聞を読みながら
呆れ帰った様な声を上げる。

「そうだっけ?」
「ジョー先輩が聞いたら泣きますよ…」

立花も溜息を吐いている。

「こっちも泣きそうだよ。
 ジョーの奴、
 しっかり報告書を残したまま
 研修に行っちゃうんだもん…」
「一兵さん……」

「………」

相変らずな様子の刑事部屋。
小鳥遊は一人、
何やら思案していた。

「人選、誤ったかなぁ…」

* * * * * *

「まぁ、常に備えてはいるんだが」
「…そうですか」

北条は会議室から一人の男性と共に出てきた。

「最近の事件は殊更凶悪だからね。
 色んなケースに対応しなければ
 我々の存在する意味を問われかねない」
「……存在、意義」

北条はふと、思いを巡らせていた。

似ているのかも知れない。
自分達と。

「大門軍団もかなりの凶悪事件に挑んでいるよね」
「…今は、『西部署機動捜査隊』です」
「失礼。そうだった」
「いえ…自分も失言でした。
 済みません……」

SATの隊員である男はふっと笑みを浮かべ、
北条を見つめている。

「君は実に興味深い人間だね」
「そうですか?」
「あぁ…。
 一緒に仕事をしたいと思わせる」

北条は黙ったまま、
じっと話を聞いている。

「…君にその気が有れば、
 一緒に組まないか?」
「…えっ?」

突然の申し出に、彼は言葉を失う。

「実地訓練での動きも見せてもらったが…
 君は実に順応性が高い。
 飲み込みも速いし、
 一介の警察官で終わらせるには惜しいんだ」

「……自分は」

確かにSATの仕事には魅力を感じる。
それは間違いない。

しかし、今…自分に必要なのは。
自分が望んでいる事は。

「まぁ、頭の片隅にでも
 残しておいてくれたら良いさ。
 君の実力は私が保証する。
 そう云う事だから」

「…有難う御座います、班長」

北条はそう言うと、敬礼で返した。

『遣り甲斐の問題だけじゃない。
 俺には必要なんだ。
 俺の居場所が…』

彼の心に去来する思い。

『俺の居場所は…
 今は西部署だけなんだ。
 小鳥遊班だけなんだ……』

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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