Act・4-6

NSM series Side・S

唯一人になった刑事部屋。
パチンと金属音が響く。

「……」

窓から入り込むネオンの光だけで
静かに何かを見つめる瞳。
普段は見せなくなった、優しい微笑。

「……」

再び、パチンと音が響く。
男は静かに窓際に立ち、
都会の喧騒を見つめていた。

* * * * * *

「あれ?」

山県は意外な物を見つけた。

「これ…アイツのじゃないのか?」

机の上にそっと置かれたロケットペンダント。
鎖が切れてしまったのだろう。

「ジョーは?」
「鎖を買いに行ったよ。
 自分で修理するってさ」
「あの不器用が出来るのか?」
「さぁ…?」

平尾は暫く何かを考えていたが。

「でも、何だか嫌だよな」
「何が?」

「ペンダントの鎖が切れるって
 嫌な予感がしない?
 スニーカーの靴紐が切れたりとか
 何かの災いの合図みたいじゃない?」
「……考え過ぎだ」

ペンダントトップにそっと触れる。
彼の胸の上で踊るそれとは
まるで別物の様だ。

「……」
「あ、大将!」

平尾が止めるのを無視して
山県はペンダントトップを掴む。
ロケットになっている部分。
それをゆっくりと開き、やがて…深い溜息を吐いた。

「捨ててやろうかな、これ」
「急に何を言い出すんだよ…」

「正直、面白くねぇ。
 判ってたけど…こうして目にすると
 益々腹が立ってくる」
「勝手に見ておいて、それは無いだろう?」

流石に平尾は少し怒っている様子だ。
彼にしては非常に珍しい。

「嫌ならどうして態々見るの。
 然も、持ち主に黙ってさ」
「…一兵」

「そう言うのって凄く自分勝手じゃない?
 怒るのは自由だけど、
 ジョーの大切な物なんだから
 勝手に捨てたりしちゃ駄目だよ」

「…お前、この写真を見た事は?」
「無いよ」
「……」

「ジョーが誰にも見せたがらないんだ。
 無理に見せて欲しいとも思わないし。
 それに…大体見当はついてるから」
「そうか…」

「まぁ、仕方が無いのかも知れないけどさ」

平尾はそう言うと
山県の手からペンダントトップを取り上げ
何事も無かった様に北条の机に返した。

「まだ、僕達はジョーの信頼を勝ち得てないんだよ。
 その写真の人物を、超えていない」
「……」

「なら、超えれば良いだけ。
 違う?」
「随分簡単に言うなぁ…」

呆れ返る山県に対して
平尾は何処までも優しい笑みを浮かべている。

「じゃあ、簡単な事にしてしまえば良い。
 元々僕達は強い信頼関係を築いてるんだから。
 それを思い出させてあげれば良い訳よ」

平尾はそう言うと、山県の肩を叩いた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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