Act・4-7

NSM series Side・S

「盗撮の次は…盗聴?」

取調室。

とうとう、と云うべきか。
北条は先程から盛んに足を踏み鳴らし、
目の前の青年を見つめている。

「お前、本当に反省って言葉知らないんだな。
 いい加減にしろって言っただろう、亨?」

臍を曲げた亨は何も話さない。
北条は溜息を吐きながらも
根気良く彼に声を掛けている。

「亨。お前、何を録ろうとしてた?」
「トップシークレット」
「亨…」

「幾ら北条さんでも言えないね。
 これは企業秘密なの」
「犯罪に企業秘密もクソもあるか」

思わず呆れ返り、北条は椅子から立ち上がった。

「お前、留置所に泊まりな」
「何でっ?!」
「犯罪者が留置所に行くのは当然だろうが」
「俺、犯罪者じゃないもん!」
「盗聴は犯罪だ、莫迦野郎っ!!」

バンッと机を叩くと、流石に亨も肩を震わせる。

「それ位で怒らなくても…」
「怒るわな……」

側でやり取りを聞いていた山県が思わず口を挟む。

「取り敢えずさ、留置所泊まりは決定だから。
 まぁ、綺麗サッパリ諦めな」
「クソ刑事共……」

亨は悪態を吐いている。

北条はふと視線を外に向け、微かに頷くと
そのまま部屋の外に出た。
暫くすると再び戻ってきたが、
山県に合図を送り、また外へと出て行った。

* * * * * *

「亨の事だけどさ」
「何だ?」

「アイツ、狙われてるみたいだ」
「…本当か?」
「俺の勘が狂ってなければ、ね」

北条の視線は先程から少しも変わっていない。
鋭さを秘めた、真剣な表情。

「お前がムキになってるのは、それか」
「…ムキにはなってないと思うけど?」

何かがあるから、彼は亨を守ろうとしているのだろう。
その『何か』は、きっと本人も判らない。
気が付いていない。
昔から、そんな所があった。

『こう云う所は少しも変わっていないって事か。
 成長が無いと言えばそれまでだが、
 俺は寧ろ、今の方が良いかな』

「どうしたんだ?」

物思いに耽る山県をいぶかしみ、
北条はそっと声を掛ける。

「大将も何か、思い当たる事が?」
「いや…」
「そうか」

「なぁ、ジョー」
「ん?」

「…守るって、決めたんだな。
 あのチンピラカメラマンを」
「まぁ、ね…」

「じゃあ取り敢えずは
 全うな取材方法を教えてやらないといけねぇな」
「本当、そうだよな」

誰かの為に強くなれる人間と云うのは
彼の様な人間なのかも知れない。
守るべき者が居る限り、彼はずっと此処に居る筈。

「お前にとっての天職だね」

山県はそう言うと、フッと笑みを浮かべた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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