Act・6-6

NSM series Side・S

「ハト、呼び出し」
「誰からです、班長?」
「フリーの記者だそうだ。
 昔は毎朝新聞に勤めてたとか何とか…。
 お前、何かやらかしたのか?」
「…まさか!」

鳩村は苦虫を潰した様な顔をしている。

「仕方がねぇな。
 気が乗らないが、行ってみるか…」
「そうしてくれ。
 ブン屋はさっさと追っ払わないと
 後々で響いてくる」
「解りました」

渋々刑事部屋を後にする彼の背中を見つめながら
小鳥遊は何故か思案深げな表情を浮かべていた。

* * * * * *

「元毎朝で…今はフリーライターの…
 菊池さん、ねぇ……」

手渡された名刺をじっと見つめながら
鳩村は更に言葉を続ける。

「ブン屋さんが態々、俺を御指名とはね。
 一体何が狙いなんだ、アンタ?」
「そいつは手厳しい一言だ」

菊池は笑いながら顎の無精髭を盛んに触っている。

「西部署の鳩村刑事と云えば、
 この世界では有名人ですからね。
 知らない奴はモグリですよ」
「…そりゃどうも」

「実はですね。
 この業界も色々とネタ不足で
 正直困ってるんですよ」
「ふ~ん。それで?」
「つれないなぁ~、鳩村さんは!」

この男、初対面だと云うのに
図々しいまでの馴れ馴れしさ。
鳩村は正直不愉快だった。

どうやって話をぶった斬ってやろうか、
署から追い出してやろうか、
そんな事ばかりを考えていた。

「トクダネが有れば
 是非、私に流して貰えませんかね?
 なぁ~に、損はさせませんよ」
「…有れば、な」
「宜しくお願いしますよ」

その瞬間、菊池が見せた不敵な笑みが
何故か鳩村の心に強く残った。
意味深な、後味の悪い笑み。

だが彼は敢えて言及する事無く
菊池の名刺を無言で受け取るに留めた。

* * * * * *

「今日は非番だってね。
 隆から聞いたよ」

或るTV局近くの喫茶店内。
立花は其処で坂上と会っていた。

「相談相手は、俺で良い訳?
 隆じゃなくて」
「兄貴、撮影中でしょ?」
「うん。まぁ、そうだけどさ…」
「アーチと、話がしたくて…」
「成程ね…。
 あ、注文お願い!
 モカとアールグレイを1つずつ」

坂上は慣れた様子でウエイトレスに注文する。
彼女の方も坂上を良く知っている様で
にこやかに微笑むと厨房へと向かった。

「此処のアールグレイはかなりイけるんだぜ」

そう言って軽くウインクする。
この辺は兄、隆と良く似た仕草だと思う。

「アーチは、モカ?」
「そう。此処ではいつもモカを飲んでる。
 拘りなんだよな」
「へぇ…」

「で?」

坂上はスッと話を切り替えて来た。

「何が遭った?
 隆も、お前が最近元気無いって心配してる」
「…実は」

立花はゆっくりとだが、
これ迄の経緯を簡潔に判り易く説明し始めた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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