Act・6-7

NSM series Side・S

最近頓に新聞紙面を賑わせる記事が有る。
時代外れの怪盗、その名も『S-R』。
正体すらも掴ませない『S-R』に
警視庁は業を煮やしている様子だ。

「面白半分に書いちゃって、まぁ…」

平尾は呆れながら、読み終えた新聞を折り畳む。

「面白いネタが無いもんだから
 警察をイビってんだよ」
「大将も言うよね~」
「だって、その通りだろう?」

見方に因ればその通りかも知れない。
だが、市民はどう見ているだろうか。

「『怪盗』って書いてあるけどさ」
「ん? どうした、ジョー?」

「この記事読んでると…
 やってる事は、
 まるで『ねずみ小僧』だよな」
「……」
「何、大将? そんな可笑しな顔して」

「お前は何時の時代の人間だ?」
「…昭和」
「もぅえぇわ……」

山県は呆れたまま、自分の席に戻る。
そんな彼を苦笑しながらも
優しい眼差しで見守る北条。

「平和ですね、ウチは」

立花の言葉に、鳩村は静かに頷く。

この時点ではまだ『他人事』で済んだ。
だが、彼等も刑事。
現実はそう甘くは無いのだった。

* * * * * *

木暮は苦虫を潰した様な表情を浮かべながら
静かに課長室を後にする。

「課長?」
「あぁ、班長…」
「どうされたんですか?」
「いやぁ…」

木暮の表情は相変わらず重い。
又 本庁から無理難題が来たのかと
小鳥遊は何となく察した。

「例の『怪盗S-R』事件な。
 ウチも担当する事になったんだよ」
「…あれ、ですか?」
「そう、あれ」
「……」

流石の小鳥遊も言葉が続かない。

「気が進まんね。
 奴が狙うターゲットは皆 曰く付きだ。
 悪党の悪事を公にする為に
 態々盗みを働いているに過ぎない」
「結果、そうですね…」
「だがな、班長」

木暮はフッと表情を変えた。
何か有りげな、悪戯小僧の瞳。

「本庁を動かして来たと云う事は…だ。
 それなりの奴が『S-R』の存在を
 疎ましく思っている証拠にもなる」
「成程、確かに…」

小鳥遊も何かを察した様だ。
思わず苦笑を浮かべた。

「解りました。
 皆には自分から話しておきます」
「宜しく頼むよ」
「はい」

小鳥遊は一礼すると刑事部屋へと入って行く。
その姿を見送りながら
木暮はそっと独り言を呟いた。

「俺の考えを見通すとは、
 班長もなかなかやりますな」

* * * * * *

小鳥遊から詳細を聞いたその日の晩。
立花は一人、寮近くの公園に居た。

「気乗りしないなぁ…」

確かに盗みは犯罪だが、
その行為によって
か弱き市民が救われているのも事実。

北条が語った『ねずみ小僧』も
満更間違ってはいない。

その『S-R』を逮捕する為に
小鳥遊班も動かなくてはいけないのだ。

「気乗りはしないけど、
 仕事は仕事だもんな…」

大きな溜息を一つ吐き、
立花は寮に戻ろうと歩を進めた。

その時だった。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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