Act・7-5

NSM series Side・S

七曲署と連携して追っている怪電話の主。
だが、その姿は依然として掴めぬまま
無情にも時間だけが経過していく。

あれから新たな予告は無い。
しかし、終わった訳でもない。
あの口調から行けば、今はまだ序章。
必ず行動を起こしてくる、過剰な迄に。

「ジョー」
「何ですか、一兵さん?」
「何か掴めた?」
「サッパリですね…」
「僕には正直に答えてくれよ。
 フォローが出来ないと困るから」
「正直に答えてますよ」

アオ吉の記憶を頼りに作ったモンタージュ写真だが
北条の記憶に残る人物とは合致しなかった。
巧みに記憶の隙間をすり抜けて行く影。

「しかし、奴は俺を知っていた。
 必ず何処かに接点が残っている筈なんだ」

無意識の内にペンダントトップを握り締める。
大切な思い出と約束が詰まった
彼が彼で在り続ける証明。

「あの事件に関係しているのなら…
 俺以外に喧嘩を売ってもいい筈。
 だが、奴は敢えて俺に喧嘩を売って来た。
 何故だ…?」
「ジョー、余り思い詰めると体に毒よ」

流石に見るに見かねたのだろう。
平尾は彼の肩を優しくポンッと叩いた。

* * * * * *

一方、刑事部屋。
何気なく電話に応対した山県は思わず耳を疑った。

「…で、怪我の状況は?」
『巧く交わしたんだが、打撲は免れないな。
 骨折してなければ良いんだが…』

電話の相手は坂上である。
高崎が怪我をしたらしいのだが、
どうもその状況が怪しいらしい。

「何も無い所から機材が降って来た、か。
 管轄の者が現場検証に向かったんだろう?」
『あぁ…。しかしな、西部署じゃないから…』
「西部署以外にも優秀は刑事は居る…」
『信用度の問題だよ』
「まぁ、不安ならコウを派遣するから待ってろ」
『頼む』

坂上の話を聞いていると
どうも彼は「事件」を疑っているようだ。
現場検証にも立ち会っている筈だが
「事故だ」とでも言われたのか。

山県は直ぐに無線に向かって立花を呼び出し、
簡潔に状況を説明した。

「とにかく先ずは病院に向かえ。
 当事者に話を聞いてからの方が良いな」
『解りました。で、現場は…?』
「俺が向かう。所轄荒らしと言われそうだがな」
『済みません、大将さん…』
「言うな。お前は兄貴の心配でもしてろ」

立花の性格は或る程度把握している。
鳩村が怪我をした時、自分を見失うまで狼狽していた。
立花が鳩村を大切に思う様に
当然、実の兄である高崎も大切に思っている。

「取り乱してくれるなよ、コウ」

山県はそう呟くと、素早く支度に掛かった。

「班長、後をお願いします」
「解った。ハト達にも連絡を入れよう」

小鳥遊が力強く頷くと、
彼は笑みを浮かべて刑事部屋を後にした。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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