Act・7-6

NSM series Side・S

立花はパトロールの最中
或るチラシを受け取っていた。
いつもなら気にも掛けなかったであろうに。

「水族館か…」

最後に訪れたのはどれ位昔だろう。
ふと気になったのが
兄である高崎の事だった。

「俺がまだ不甲斐無いから…
 なんだよな」

結局あの一件は『事故』として扱われた。
坂上は「納得出来ない」と言っていたが
それ以上は動き様が無いのも事実。

「大事に至らなくて…
 本当に、良かった」

静かにそう呟き
立花の意識は再び車外に移った。

* * * * * *

『まぁ覚悟はしていたけどね。
 案の定、病院内外は大騒ぎだよ』

坂上からの連絡に、鳩村は苦笑を浮かべている。
彼も又、或る程度は予想出来ていた。

「仕方がねぇわな。
 ファンからすれば、心配で仕方が無いんだ。
 それも芸能人の宿命だよ」
『そうなんだがね。
 他の患者さんの迷惑にならない様にだけは
 最低限気を付けておかないと』

「その口調からすると…
 気にしているのはファンじゃねぇな。
 まぁ、アイツのファンは
 常識外れが居ない事でも有名な話だから。
 と、なると…マスコミか」
『…御名答』

「事務所の力で何とかならない?」
『難しいね…』
「相当巨大な事務所なら
 揉み消す事も可能だろうが…
 特にパパラッチ系が相手となると
 余計に難しいか」
『そう云う事』

マスコミへの対応なら
坂上も重々承知している事だろう。

「まぁ…何にせよ、だ。
 ファンの有り難味を深々と感じてるんだろう?」
『あぁ、勿論』
「お前等は良いファンに恵まれてるよ」
『御蔭様でね』

電話口のざわつきが少し大きくなってきた。
又この分だと一悶着起こっているのだろう。

「行ってこいよ」
『あぁ。じゃあな』

挨拶もそこそこで電話は切れた。
マネージャー業も楽ではないと
彼を見ているとつくづく思う。

「俺には向いてない業種だな」

鳩村はそう呟き、フッと笑みを浮かべた。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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