Act・7-7

NSM series Side・S

「事件に次ぐ事件じゃ
 息を抜く暇すりゃねぇな」
「息を抜くなって事じゃないの?」
「…厳しいね、ジョー君」
「無駄話もしてる暇無いかもな」

北条の目は先程から一人の女に向いていた。
時期外れの暑さを凌ぐ為に
注文したアイスコーヒーを咽喉に流しながら
山県は冷や汗を流している。

「本当…似てきたな」
「ん?」
「あの人にさ」
「俺が?」
「そう。そう云う目付きとかな」
「そりゃ、光栄。
 でもハトさんが傍に居る時には
 そう云う事を言うなよ」
「…そうだったな。
 相変わらず、お前には風当たりキツイし」
「仕方が無いさ…」

視線が動く事も無く答える。
ふとした仕草でさえも、確かに似てきた。

「大将、出るぞ」
「んっ!」

北条に急かされ、山県は慌てて
アイスコーヒーを飲み干した。

* * * * * *

「北川久恵。23歳。
 この女が?」

強盗団の一人として
挙がってきた女の写真を手に
立花は平尾に質問を投げ掛けた。

「実行犯との繋ぎみたいだね。
 現場に潜入し、情報を流す役」
「時代劇に有りましたね、そう云う役は」
「時代を問わず使える手なんだよ。
 一見OL風だし、確かに入り込まれても怪しまないか」

「…見た目も派手じゃないですよね」
「うん。目立たない様に工夫しているのかも。
 造詣なんかは綺麗なもんだから、さぞかし…」
「一兵さん?」
「…失言でした」
「だから今回の張り込み、
 外されたんじゃないですか?」
「……」

女が絡むと云う事で無条件に候補から外された。
小鳥遊の決断に頷くしかなかった事を思い出し
平尾は珍しく不機嫌になっている。

「私情は挟まないって…思うんだけどな。
 僕もいい年なんだし…」
「自分は何とも言えませんよ」

平尾の調子の悪さを感じ取ったのか、
立花は慌てて珈琲を用意する。

「報告が入りませんね…。
 大将さん達、まだ張り込み中でしょうか?」
「多分ね」

珈琲を味わいながら、平尾がフッと息を吐く。

「最近多いね」
「何がですか?」
「ジョー、大将とよく組んでる」
「そう言えば…よく誘ってますよね。
 ジョー先輩の方から」
「大将って…昔はハトと組んでたんだよ」
「そうでしたよね。
 ハトさんが自分の教育係をして下さってるから
 その関係で、かと思いますけど…」
「まぁ、それもあるけどさ。
 一時期はジョーの奴、単独捜査が多かったから
 今は割と安心してるよ」

立花はその時に感じ取った。
最近の平尾は、北条の話をする時に
少し穏やかな表情を浮かべている。
それが意味するものは…何だろうか、と。

「ん、無線入った!」

この辺りの反応は流石に速い。
平尾は直ぐに無線機を掴むと応答に入った。

「北川久恵、実行犯と繋がったぞ」
「実を結びましたね、張り込みが!」
「そう云う事!!」

2人は急いで現場へと向かった。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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