Act・7-9

NSM series Side・S

鳩村がいつも以上に荒れている。
北条は何かを察したのか、
スッと刑事部屋から離れた。

「ハトさん…」

立花の声に鳩村は心底
申し訳無さそうに微笑む。
だが、声は無い。

鳩村の激昂した原因は
今朝の新聞の内容に有った。
見出しにはこうある。

『引き継がれる大門軍団の掟
 市民無視の強行捜査』

内容にも怒りを覚えたが
その新聞をゴミ箱に突っ込む気も起きない。
何に苛立つのか、何が哀しいのか。
何処かで解ってはいるのだが。

「俺達が動かなきゃ…
 誰がこの街を守るんだよ…?」

鳩村は呻く様に声を絞り出した。

* * * * * *

「賑やかだねぇ…」

木暮は課長室の窓から
下で騒いでいるブン屋達を眺めていた。

「で、班長。
 今回の件で誰が一番ダメージ受けた?」
「はい…?」
「隠さなくても良いよ。
 ハトがさっき大騒ぎしてただろう?」
「えぇ…。丸聴こえでしたね」

小鳥遊はソファに腰を下ろし
静かに木暮を見つめている。

「何処から『抜かれた』かなぁ…。
 最近巧妙に情報を素っ破抜いては
 ブン屋さんに提供してる輩が居るみたいでね」
「…確かに、最近は情報網が広がり
 一般人も容易く情報提供が出来る」
「問題は、だ…班長。
 それが『悪意を持って』提供されている」
「我々に…ですか」
「奴さんは随分『大門軍団』に御執着の様だ」

木暮の視線が窓の先から
室内の小鳥遊に戻る。
その瞬間、小鳥遊は身震いを起こした。

見覚えの無いほど鋭い、視線。
誰かを髣髴とさせる視線だった。

「モンスターは案外
 我々の直ぐ側で生息しているのかも知れん。
 燻し出さないと、後々大問題を引き起こしかねん」
「課長…」
「それ迄は…へこたれる訳にはいかんよ」

木暮の表情に笑顔が戻る。
それを見て、漸く小鳥遊も笑顔を返した。

「そう言えば…」
「はい?」
「ジョーさんは何処に行った?」
「ジョーに何か用事、ですか?」
「あぁ…。一寸話が有ってな。
 アイツ、また巧く逃げただろう」

先程の騒動の最中に
北条が刑事部屋を離れた事も
どうやら木暮は察知したらしい。

「いい加減アイツには落ち着いてもらわんと。
 散々ハトには世話になってるんだ。
 今度はアイツが世話をする番だろうに」
「容赦が無いですね。
 流石は課長…と、申し上げるべきか…」
「いやいや」

木暮は少し困った様に笑う。

「俺じゃない。大さんだよ。
 大さんなら、間違い無くこう言うさ。
 俺は代弁してるだけ」
「成程…、先輩なら納得です……」
「班長からそれとなく伝えてもらえんか?」
「えっ?!」

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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