Act・8-1

NSM series Side・S

「1週間の謹慎、ねぇ…」

パトロールの最中思わず出た言葉。
話は本人から聞いてはいたが
どう考えても納得出来ない。

『あの程度』の事で自宅謹慎等
大門軍団時代では有り得ない。

「ハトぉ…お前もクドイね」
「納得行かないのはお前も同じだろう、大将?」
「まぁ、それもそうだがよ」

ハンドルを握りながら
思わず鳩村の勢いに釣られている。

「菊池と廊下ですれ違ってから
 アイツの表情が変わったんだよ」
「菊池?」
「例のブン屋」
「あぁ。で、アイツって?」
「…ジョー」
「? 知り合いなのか?」
「誰が?」
「ジョーとそのブン屋」
「いや。ジョーは否定してた」
「ふぅ~ん」

正しくは『覚えていない』が返答なのだが。
鳩村に言わせれば「大差無い」範疇なのだろうか。

「大将」
「ん?」
「お前、何かジョーから聞いて無いか?」
「何で俺が?
 何か遭ったら俺よりお前に話すだろ?」
「昔はな。でも今は違う」
「そうか?」
「そうだよ」
「お前がコウばかり構ってるからじゃねぇの?」
「どうしてそう云う発想になる?」

山県からすれば
鳩村の「昔と今は違う」発言は
いい加減ウンザリするのである。
鳩村が昔を大切に思うのは解るが
それが強過ぎると傷付く者も居る。
立花はその最もたる存在だ。

「お前もさ、いい歳なんだから。
 少しは先輩らしく構えてろよ」
「…構えてないのか?」
「肝心な時に頼り無い所は
 昔よりもマシにはなったがな」

豪快に笑い飛ばす山県に対し
鳩村は要領を得ない表情で
彼を黙って見つめるだけだった。

* * * * * *

「お、珍しいね。
 君が態々尋ねてくるなんて」

新宿区、七曲署。
西條はご機嫌な様子で
刑事部屋に北条を誘い込もうとまでしていた。

「いや、此処で良いっすよ」
「お茶くらい出しますって!」
「高くつきそうなんで遠慮します」
「そんな…喜多さんみたいな言い方」
「されてるんですか、喜多さんに」
「…嫌な事聞かないでよ」

少し拗ねた様な仕草を見せるが
それに対し北条が反応を返す事は無い。
ドライなのではなく、気付いていないのだ。

「話を元に戻そう」

空しさを感じたらしい。
西條は急に真面目な態度に戻った。

「例の時限爆弾に関する事で
 少し話を伺いたいんです」
「おや? 又その話?」
「又…とは?」
「数日前にも来てたよ。
 お宅の班長さん」
「班長が…?」
「あぁ、その際に2~3点
 気になる事を見つけた、とかで…」

西條は警察手帳を取り出し
何かを必死に探し出していた。

「あ…あぁ。有った、有った。
 この事件簿、探してたんだよね」
「代々木…?
 コレ、七曲署の所轄じゃないですよね?」
「所轄外だけどさ、
 西部署と連携して捜査してたんだよ」
「俺が西部署に戻る前の事件だな…」
「この間は見付からなかったんだけど、
 今は俺が保管してるから見られるよ」
「お願いしても良いですか?」
「あぁ。じゃあ先ずはお茶でも…」
「いや、急いでるんで」
「…了解」

2人が署内に入っていく姿を
何者かが静かに見届けていた。
ただ、静かに。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
Home Index ←Back Next→