パトロールの最中思わず出た言葉。
話は本人から聞いてはいたが
どう考えても納得出来ない。
『あの程度』の事で自宅謹慎等
大門軍団時代では有り得ない。
「ハトぉ…お前もクドイね」
「納得行かないのはお前も同じだろう、大将?」
「まぁ、それもそうだがよ」
ハンドルを握りながら
思わず鳩村の勢いに釣られている。
「菊池と廊下ですれ違ってから
アイツの表情が変わったんだよ」
「菊池?」
「例のブン屋」
「あぁ。で、アイツって?」
「…ジョー」
「? 知り合いなのか?」
「誰が?」
「ジョーとそのブン屋」
「いや。ジョーは否定してた」
「ふぅ~ん」
正しくは『覚えていない』が返答なのだが。
鳩村に言わせれば「大差無い」範疇なのだろうか。
「大将」
「ん?」
「お前、何かジョーから聞いて無いか?」
「何で俺が?
何か遭ったら俺よりお前に話すだろ?」
「昔はな。でも今は違う」
「そうか?」
「そうだよ」
「お前がコウばかり構ってるからじゃねぇの?」
「どうしてそう云う発想になる?」
山県からすれば
鳩村の「昔と今は違う」発言は
いい加減ウンザリするのである。
鳩村が昔を大切に思うのは解るが
それが強過ぎると傷付く者も居る。
立花はその最もたる存在だ。
「お前もさ、いい歳なんだから。
少しは先輩らしく構えてろよ」
「…構えてないのか?」
「肝心な時に頼り無い所は
昔よりもマシにはなったがな」
豪快に笑い飛ばす山県に対し
鳩村は要領を得ない表情で
彼を黙って見つめるだけだった。
「お、珍しいね。
君が態々尋ねてくるなんて」
新宿区、七曲署。
西條はご機嫌な様子で
刑事部屋に北条を誘い込もうとまでしていた。
「いや、此処で良いっすよ」
「お茶くらい出しますって!」
「高くつきそうなんで遠慮します」
「そんな…喜多さんみたいな言い方」
「されてるんですか、喜多さんに」
「…嫌な事聞かないでよ」
少し拗ねた様な仕草を見せるが
それに対し北条が反応を返す事は無い。
ドライなのではなく、気付いていないのだ。
「話を元に戻そう」
空しさを感じたらしい。
西條は急に真面目な態度に戻った。
「例の時限爆弾に関する事で
少し話を伺いたいんです」
「おや? 又その話?」
「又…とは?」
「数日前にも来てたよ。
お宅の班長さん」
「班長が…?」
「あぁ、その際に2~3点
気になる事を見つけた、とかで…」
西條は警察手帳を取り出し
何かを必死に探し出していた。
「あ…あぁ。有った、有った。
この事件簿、探してたんだよね」
「代々木…?
コレ、七曲署の所轄じゃないですよね?」
「所轄外だけどさ、
西部署と連携して捜査してたんだよ」
「俺が西部署に戻る前の事件だな…」
「この間は見付からなかったんだけど、
今は俺が保管してるから見られるよ」
「お願いしても良いですか?」
「あぁ。じゃあ先ずはお茶でも…」
「いや、急いでるんで」
「…了解」
2人が署内に入っていく姿を
何者かが静かに見届けていた。
ただ、静かに。
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