Act・9-7

NSM series Side・S

Top探偵社所有のパソコン宛に
一通のメールが届いたのは
西部署で平尾が電話を受ける1時間前。
最初に気が付いたのは大下だった。

「何これ?」
「迷惑メールの類なら篩い別けしたんだろ?
 今更何だよ」
「いや…その今更なんだけど」

持ち前の勘が働いたのか、
大下はそのメールを開いて読み始めた。

「おい、ユージ!」
「大丈夫だ、ウィルスメールの類じゃない。
 寧ろこれって…」
「ん?」
「タカ、新宿に行くぜ」
「ユージ…」
「新宿西口のロッカーでお宝が眠ってるってよ」
「…成程、そう云う事か」

納得が行ったらしい。
鷹山もニヤリと笑みを浮かべると
相棒の肩を軽くポンポンッと叩いた。

「相変わらず鼻が利くよね」
「まぁ、こう云う事はね」
「でも女に対しては
 御自慢の鼻も効かないのよね」
「まぁ…そう云う事は、ねぇ……」

* * * * * *

「これで良し」

渋谷の一角にあるインターネットカフェの一室。
座った姿勢のまま青年はゆっくりと伸びをした。

『立花さん。貴方なら辿り着ける筈。
 鳩村さんの過去に残された遺恨、
 貴方なら払拭出来るって…信じて良いよね?』

手元のマグカップに手を伸ばし
少し冷めた珈琲を喉に流し込む。

『こう云う遣り方は僕らしくないかも知れないけど。
 あいつ等の手口、嫌いなんだよね。
 これで一掃出来ちゃえば僕達も仕事がし易い』

蛇の道は蛇。
怪盗【S-R】にとって
今回、小鳥遊班が挑むヤマは
他人事には思えなかった様だ。

『西部署、七曲署と動いてるんだ。
 元敏腕刑事であったTop探偵社の二人の腕前も
 一度ちゃんと見たいと思っていたし、好都合だ』

そろそろ引き払う時間が近付いて来た様だ。
コップの珈琲を一気に飲み干し、
来た時同様の軽装備で部屋を後にする。
無論、何一つ証拠は残していない。
椅子の温もり以外は。

「そろそろ新聞の一面が気になる時期だな」

意味深に呟いた青年の声は
雑踏に溶け込み、消えていった。

* * * * * *

山県が新宿西口のロッカールームに到着したのは
鷹山と大下がその場に着いた30分後だった。

「あれ?」
「よう」
「何で?」
「呼ばれたの」
「誰に?」
「ラブレターの相手」
「はぁ~?」

要領を得ない二人の発言に
山県の表情から次第に余裕が消えていく。

「タカ、そろそろ遊ぶの控えないとヤバイぜ。
 大将の奴はハトと違うんだから」
「そ、そうだね。そろそろ本題に進むか、ユージ君」

鷹山は苦笑を浮かべると
コインロッカーに残されていた
1枚のSDカードを山県に差し出した。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
Home Index ←Back Next→