Act・9-8

NSM series Side・S

「何者かは知らないけど律儀だね。
 こんなお宝を用意してくれるなんて」

持ち帰ったSDカードのデータを確認しながら
鷹山はニヤリと笑みを浮かべた。

「ま。罠かも知れないけど」

口元にニヒルな笑みを浮かべたまま
鷹山の視線は山県に向けられる。

「で、どうするの? 追う?」
「おう!」
「お…おぅ……」
「決まってるだろ。
 罠かも知れないなんてビビってる様じゃ
 真相には辿り着けないんだよ」

山県は勢い良くディスプレイを指差す。
画面にビッタリと指紋が付き
大下が大袈裟な位に肩を落とした。

「このヤマ、臭いと思ってたんだ。
 本当の狙いはハトじゃねぇかって
 丁度 一兵と話してたところだった」
「成程…。じゃあ、この情報って」
「読みと合致する」
「俺は益々罠だと思うんだけど…」
「それなら掛かってやるさ」
「マジ?」
「あぁ。真相を突き止める為にな。
 それに…」

鷹山の方に向き直した山県の目は
自信に溢れ輝いている。

「油断を呼び込んで一気に形勢逆転させてやる」
「…成程」
「西部署の連中だってそれなりに修羅場越えてんだし
 俺等がどうこう言う必要は無いのかもよ、タカ」
「…まぁ、ユージの言う通りかな」

カードリーダーからSDカードを抜き出すと
大下はそれを山県へと手渡した。

「但し、油断だけはするなよ。
 ハトの野郎、アメリカじゃ相当やらかしてるみたいだし
 敵さんも本気だって事だからな」
「忠告、痛み入りますってか」

受け取った【鍵】を手に、
山県はそのまま西部署へ向かうべく駆け出した。
勢いよく開けられた扉を見送りながら
鷹山と大下は同じタイミングで笑みを浮かべる。

「…なぁ、タカ」
「ん? 何だ? ユージ」
「現場退いてそれなりになるけど、
 やっぱ良いよな。この感覚」
「そうだね」
「デートよりも?」
「どうだろ? 極上の女との時間も良いが」
「へぇ~。そうなの?」
「比べる方が無粋なんだよ、ユージ君」
「流石はデートの達人!」
「褒めても何も出ないよ?」
「ポカリ位は頂戴よ」

* * * * * *

頭の奥で又、声が響く。
一人は吉岡。
でも相手の声は、小さくて遠い。
これは…電話?
それとも、側に居る…のか?

明かりが眩しい。
耳障りな機械音がする。

変だ。
この感覚、前にも何処かで…。
そうだ、何処かで知っている。
この不快な感覚。
そして…研ぎ澄まされる殺意…。

駄目だ、吉岡。
その音を聞いちゃ、駄目だ。
取り返しの付かない事になってしまう…。

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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