Act・9-9

NSM series Side・S

毎週楽しみにしているラジオの時間なのに
今日に限って何やら変な放送が入ってきている。
耳障りなノイズと共に聴こえる声。
何かの相談をしているのか?
時折怒鳴り声が混じっている。
それと何かが壊れる音。後は…何の音だろう?
毎週楽しみにテープを録っている番組だけど
今日の放送分は録った後に警察に持って行こう。

* * * * * *

奇妙な放送が流れて来たと云う高校生が
問題の番組を収録したテープを持参してきた。
平尾は機転を利かせ、
そのテープを捜査一課で預かる事にした。

「盗聴テープみたいだな。
 結構鮮明に録れてるから聴き取り易い」
「そうだね。余程巧く音を拾ってたんだ…」
「ん?」
「どうしたの、大将?」
「この声…ジョーだろ」
「どれ?」

山県は直ぐにテープを巻き戻して問題の個所に合わせる。
苦しそうに何かを伝えている声。
耳に馴染みのある声。
間違いない。これは北条の声である。

「この放送って何時だったんだ?」
「昨晩だって。20時頃の…」
「じゃあまだジョーは無事だな。
 詳しく調べなきゃ判らないかも知れんが
 編集して電波に乗せた音では無いな」
「やっぱり盗聴した物を無線ジャックして?」
「その可能性が高い。問題は…」
「【誰】が【どんな目的】で電波に乗せたか、だね」
「あぁ。こんな内容、バレたらタダじゃ済まないだろう。
 其処迄して危険な博打に出たのは誰かって事だ。
 少なくともジョーにそんな事出来る芸当はねぇし」
「僕は…吉岡 沙耶の兄が心変わりしてくれた事を願うよ」
「心変わり…ねぇ」

眼鏡をカチャンと鳴らして直すと平尾は山県の正面に座り直した。

「ジョーは吉岡の背景を理解してると思う。
 彼の説得に当たってるとも考えられるからさ」
「それは大いに可能性が有るな。
 なら吉岡の心変わりってのも納得出来るか」
「うん。だからこそ早く此方も動かないと。
 この放送内容が黒幕にバレたら
 吉岡だけじゃなく、ジョーも危ないって事だ」

山県は頷くとそのまま刑事部屋を後にする。
北条の行方を追うべく、捜査を再開する為だ。

「さて、ハトさん達にも連絡入れないと。
 Topの二人から仕入れた情報とこの放送内容。
 ハトさんなら真相にいち早く辿り付けそうだ」

慣れた手つきで平尾は無線機を取り上げた。

「此方捜査課。ハトさん、コウ。応答願います。どうぞ」
『此方、鳩村。一兵、どうした?』
「今回の事件の背景、漸く見えて来たよ」

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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