Act・9-10

NSM series Side・S

Top探偵社の二人から齎された情報に
鳩村は暫し言葉を発する事無く
それを立花は心配そうに見つめている。

「雑誌の切り抜き…。然もアメリカンタイムズ」
「昔の記事なんですか?」
「あぁ。大昔のな」
「どうしてそんな物を態々?」
「其処に【俺が】載っているから、だろう」
「?」
「漸く掴めたぜ。黒幕の狙い」
「ハトさん…?」
「やはり敵の狙いは俺だ」
「?!」
「この記事が出た当時、俺はSWATに所属していた。
 そして…丁度この頃、アメリカ大統領選挙があってな」
「警備に当たってたんですね」
「あぁ。或る候補の党大会の演説にな」
「……」

立花も漸く合点がいったらしい。
つまり黒幕はこの候補を暗殺しようと企んだが
SWATに阻止されたと云う事なのだろう。

「敵さんのスナイパーを射殺したのは
 生憎、俺じゃないんだがな。
 当時としては珍しい東洋人の隊員は
 目立ちやすかったのかも知れん」
「だからって…それじゃ逆恨みもいい所だ!」
「そんな単純な事じゃないさ。
 大統領クラスの暗殺とありゃ、背後に巨額の金が動く。
 下手すりゃ戦争に突入で、更に儲ける輩が出て来る。
 悲しいがな、それが世界の裏面だったりする訳だ」
「…解ります。でも、それを許す訳にはいかないのが」
「そう。それが俺達だ」

鳩村は平尾から渡されたもう一枚の写真を立花に見せる。

「アメリカンタイムズの記事を
 和訳して載せたのがこの雑誌だ。
 記者名は…菊池 憲治」
「これって…吉岡の偽名ですよね?」
「そうだ。この記事を出した事で
 奴は黒幕にマークされたって訳だ」

二冊の雑誌が導いた殺意。
鳩村は大きく溜息を吐く。

「ハトさん?」
「今回のヤマは…俺の責任だな。
 俺が西部署に、大門軍団に所属したばかりに
 署にも、仲間にも迷惑を掛けちまった」

流石にこれらの情報は鳩村にとって堪えたのだろう。
だが、立花は険しい顔を彼に向けてこう言った。

「なら、ヤマを解決すれば良いだけですよ。
 他ならない、ハトさん自身の手で」
「…コウ?」
「ジョー先輩を助け出すって事も
 責任を果たす事になりますよね?」
「……」
「大門団長なら、きっと言ってくれる筈です。
 『自分で自分のケツを拭け』って」
「…そうだ。そうだな。
 それが、【大門軍団】って奴だ」

漸く笑みを浮かべた鳩村に対し、立花も静かに頷いてみせた。

「奴等は絶対に俺を狙って動く。
 だが俺も黙ってやられる訳にはいかん」

鳩村には考えがあった。
仲間達は反対するかも知れない。
しかし、これ以上の名案は今現在浮かばないのも事実。

「コウ。お前は何が遭っても人質優先で動け」
「……ハトさん」
「積年の恨みを晴らせるとなれば、奴等も俺しか見ないだろう。
 当然其処に隙が出来る。ならば其処を突く」
「…ハトさんらしいな」

意外にも立花は反対しなかった。
その代わりに、只 一言。

「死なせませんからね。俺達が絶対に」

お題提供:[刑事好きに100のお題]
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