再 会

スッカリ秋空の鳥居坂署。

慣れた道を自転車で
のんびりとパトロール。
五井 康夫はいつもの様に
鼻歌交じりで警邏中である。

「今日も平和で何より何より…」

ご機嫌に辺りを見渡すと
いつもとは違う風景が
其処に展開していた。

厳密に言うと
昔は『馴染み』だった風景。

「…あ」
「よう」

サングラスを少しずらしながら
少し恥ずかしげに
その人物は笑っている。

「隠れん坊を見つかった気分だ」
「…そりゃ、
 此処は体を隠す場所が無いですから」

五井は涙が溢れそうになるのを
感じていたが、
何とかそれを堪えている。

「…何か食いに行かないか?」
「えっ?
 今、パトロール中ですが…」
「相変わらず頭の固い奴だな。
 もう少し柔軟に行かないと
 後で苦労するぜ」

男はサングラスを直し、
悪戯小僧宜しく笑みを浮かべた。

* * *

「御機嫌ですね」
仙道に声を掛けられて初めて
五井は自分の表情に気が付いたらしい。

「何か素敵な事がありましたか?」
「えぇ。最高な事がありました!」
「それはそれは…」

仙道は感受性の強い人物なのだろう。
共に喜び、共に悲しむ。
それがごく自然に表れる、人物。

だからこそ人が集まっていく。
彼の周りは暖かい空気が漂っている。

あの男が仙道に心を開いたのは
偶然ではなく、必然。
仙道だからこそ払えた
あの男の心の闇。

「…凄い人だな」
五井の独り言に仙道は眉を顰めた。

「何ですか?」
「何でもありませんよ。
 あ、明日の天気はどうなんだろう?」
「明日はですね……」

仙道はいつもの笑顔で
嬉しそうに空を見上げていた。
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