Merak・9

慣れぬ事に戸惑いながらも
トキは丹念に舌を動かしていた。
たどたどしいが丁寧な行為に
人柄が透けて見える。
いい加減な事が出来ない性格。
ラオウは何とかこの時間を持続させようと
懸命に快楽を耐えていた。
簡単に解き放つには惜しい。
それ程までに心地良い感触だった。

初めてにしては歯を立てる事も無く
舌先だけかと思いきや
ぎこちなくても手技を使っている辺り
彼は彼なりに学んではいたのだろう。
如何すれば気持ち良くさせられるのかを。

「…くっ」

劣情が込み上げてくる。
そろそろ堪え切れなくなったのか
ラオウは小さく唸り声を上げた。
トキには聞こえていない様で
相変わらず丁寧に口で咥えている。

「ト…キ……」
「?」

ラオウはそのまま剛柱を引き抜こうとしたが
その意図を理解していなかった為か
トキの口はギリギリまで閉じられた状態だった。
スッと引き抜く事は叶わず
熱い飛沫がそのままトキの喉の奥を直撃した。

「ぐっ…! ゲホッ! グホッ!!」

激しく咽るトキの口元は白く染め上っていたが
懸念していた吐血はどうやら無かったらしい。
ラオウはホッと胸を撫で下ろし、
愛しい弟の身体を優しく抱き締めた。

「初めてにしては随分と巧いではないか」
「……必死だったから、な」

まだ呼吸は苦しげではあったが
トキは照れ臭いのか顔を下に向けていた。
しかし髪の間から見え隠れしている耳が
ほんのり朱に染まっているのを
ラオウは見逃さなかった。

* * * * * *

ラオウの館に戻ったリュウガは
謁見の間に居たソウガに詳細を説明した。
勿論、ラオウに人払いを命じられた件もである。

「拳王様はあの場所で
 トキを倒すおつもりなのだろうか」
「それは違うな」
「何? では何故、人払いを…?」
「トキを仕留めるのであれば
 公衆の面前で無ければ意味が無い。
 聖者、救世主と呼ばれた男を
 闇討ちする様な輩では
 どの道、この世界を平定など出来ぬだろう。
 勝負はあくまでも公平に、
 その上での勝利でなければ
 誰も拳王の功績を認めようとはせん」
「た…確かに、至極真っ当な意見……。
 では何故…?」
「あの二人の間には…
 誰にも入れぬ空間と云う物が存在する」

ソウガはそう言って目を細めた。
嘗ての古い記憶を呼び起こしているのだろう。

「拳王も人の子と言う事だ」

フッと笑みを零し、ソウガは
謁見の間を後にする。
その後ろ姿を見送りながら
リュウガは拳王、ラオウの言葉を思い返していた。

* * * * * *

「あっ! あぁぁっ!!」

後ろから何度も突かれる度に
甘い嬌声がトキの口から溢れ出る。
何度となくラオウに抱かれ、覚えたこの感触。
最早抗う事は出来なくなっていた。

「ひぃっ! い…あぁあぁぁーーーっ!!」
「まだ耐えられるであろう?
 そんなに速く達してしまっては面白くない」
「そ…むり、だ…あぁ……」

だらしなく開いた口の端から透明の滴が流れる。
それでも涙を堪えている辺りは
流石に約束を誰よりも重んじている男だけある。

「まだ逝くな。つまらぬからな」
「うっ…うぅぅ……」

ラオウはトキの勃ち上がった陰茎を扱く事は無く
その先端を指先で強めに押さえ付けた。
これで自分の意志通りに逝けなくなる。
それでも何とか吐精したいと抗う陰茎に
思わずラオウは苦笑を漏らした。

「締め付けがきつくなった。感じておるのか」
「…うぅ……ゆび、はなし……」
「聞こえぬな」
「!!!」

鈴口が広がるかの様に指を更に押し入れる。
白い物が混じった先走りがラオウの親指に絡み付く。
その状態で器用に陰茎を擦ってやると
流石に耐えられなくなったのだろう。
トキは激しく首を左右に振って反応した。
獣の様な咆哮を響かせる。
最早言葉にもならず、音が吐き出されている状態。

「何度でも逝かせてやろう。
 うぬの気が済む迄、何度でも放ってやろう。
 俺の全てを受け止め、己の糧とするが良い」

耳元で囁かれるラオウの甘い言葉は
果たしてトキに届いていただろうか。

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SITE UP・2017.01.25 ©森本 樹



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