Rache

高濃度の残留放射能が漂う地点に
ずっとフラフラと歩いていたからか。
僕はその後、気を失った。
真田さんに抱き締められて…
薄っすらとした記憶の奥底で
聴こえてきた声を思い出してみる。

「死なせはしない…。
 もう、失ってなど堪るか…っ!」

そうだよね…。
失ってから気付いても、
もう…取り戻せないから。
帰っては来ないのだから。
それなら…失わない様に守るしかない。
僕も…同じ、だよ……。

* * * * * *

意識を取り戻した
僕の目に飛び込んで来たのは
見慣れない白い部屋だった。

暫く顔を動かしてみるけど
誰かが見付かる訳でもない。
もう一人は嫌なのに。
思わず涙が溢れ出してきた。

すると、その時。

「進っ!!」

聞き慣れた大きな声。
ずっと聞きたかったその声。

真田さんが部屋に招き入れたその人は
紛れも無く…軍服に身を包んだ
僕の唯一人の肉親、守兄さんだった。

「進! あぁ…進……っ!」
「に、い…さん…?
 兄さん! 守兄さんっ!!」
「無事で…無事で良かった…。
 お前だけでも、無事で居てくれて……」

兄さんは僕を力強く抱き締めると
そのまま何も言わなくなった。
代わりに感じたのは温かな水の感触。
兄さんは…多分、僕が初めて見る姿だけど
確かに、泣いていた。
声こそは出さなかったけれど…
確かに…泣いていたんだ。

* * * * * *

軍人って云う職業には
個人的な時間が存在し無いんだろうか。
この異常な状況下だからこそ
必要とされているからこそ、
時間が与えられないんだろうか。

兄さんは何度も、
直ぐに戻って来れなかった事を
僕に詫びてきた。
そしてその度に真田さんが兄さんを慰める。

僕だって兄さんを責める気は無い。

そうだよ。
兄さんは悪くないんだ。
悪いのは…全て、ガミラスなんだ。
僕は絶対にガミラスを許さない。
どんな事が遭っても、絶対に…。

僕は未来を選ぶ。
決めたんだ。
もう迷わない。

この戦いを終わらせるんだ。
ガミラスを滅ぼして
昔の地球を取り戻すんだ。

兄さんは…反対するだろうか?
だけど兄さん、解るよね。
僕がどれだけ苦しんだか、悔しかったか。

だから、良いよね…兄さん?
僕だって男なんだ。
男だからこそ、戦わなければいけない。
僕は…戦士になるよ。
兄さんの様な、立派な宇宙戦士になるんだ。

もう…誰にも悲しんで欲しくないから。
誰にも…涙を流して欲しくないから。
僕で…終わりにしたいんだ。

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SITE UP・2010.05.15 ©Space Matrix

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