Relativ

こうして同じ布団で眠るのは
何年ぶりになるんだろうね。
兄さんが訓練学校に進学してからは
ずっと、こうしたくても出来なかった。

皮肉だね。
お父さんとお母さんを失って
漸く願いが叶うなんて。

「進…」

兄さんの声が聞こえてくる。
優しく抱き締められながら、
そっと髪を撫でられながら。
安心出来る、この腕の中。

「どうした、進?
 眠れないのか?」
「ううん……」
「何か、気になる事でも?」
「うん……」
「何だい? 言ってごらん」
「…久しぶりだから、嬉しい」
「嬉しいって…何が?」
「こうして…兄さんと一緒に寝るの……」
「……そうか」

兄さんは少し微笑んだみたいだった。
そのまま、もう少しだけ
僕が痛がらない程度に力を入れて
強く抱き締めてくれた。

兄さん。
僕の大好きな守兄さん。
僕の唯一人の…家族。

「このまま…お前を……」
「…え? 何か言った?」
「いや…何でも、無いよ……」

兄さんはそう言って微笑むと
僕のおでこに優しくキスをしてくれた。

* * * * * *

「あれ?」

朝、起きてみると
兄さんはベッドの横で僕を見つめていた。
制服はちゃんと着ているのに
出かける気配が無い。
休暇、だろうか。

「兄さん…お仕事は?」
「暫くは地上勤務なんだ。
 だから、此処から通う事にするよ」
「大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。
 進は、早く良くなる事だけ考えていなさい」
「は〜い」

兄さんは青年将校って立場だから
上の命令は絶対だろうし、
きっと…仕事が出来るから
地上勤務を命じられたんだ。

僕は勝手にそう思っていた。
実際の問題として、
余りこの推理は外れていないだろう。

『兄さんが地上勤務を切望した』
と云う事実を除けば。

後で自分自身が不利な立場に
置かれるかも知れないのに
この時兄さんは、誰よりも僕を優先してくれた。
その事実は…この時、まだ僕は知らない。
知るのはずっと後。
そう…僕がもっと大人に成ってから。

真田さんが教えてくれた。
兄さんが、どれだけ僕を想ってくれているか。
どれだけ僕を愛してくれているか。

仲の良い兄弟で居ると思ってたのは
案外、僕だけだったのかも知れない。
それを知るのも、もっと…先の話。

今は暫く、このままで居よう。
元気になったら言わなくちゃ。
大切な事。
兄さんにだけは伝えなきゃ。

僕も一緒に戦うよ。
兄さんと一緒に、
宇宙戦士として戦うんだ。

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SITE UP・2010.05.21 ©Space Matrix

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