Überzeugungskraft

「何を言い出すんだ、進?!」

病室に似つかわしくない大声。
物静かに見える兄さんらしからぬ声。
流石に僕も、同席していた真田さんも驚いた。

尤も、真田さんは
別の意味でも驚いていただろうけど。

「落ち着け、古代。
 少しは落ち着かんか」
「し、しかし…しかしだな、真田」
「此処は病室だぞ。
 もう少し冷静になってはどうだ?」
「…うむ」

こう云う時は本当に
真田さんが居てくれて良かったと思ってる。
僕と兄さんだけなら
きっと話し合いにもならないに違いない。
兄さんが頑固なのは知ってる。
いつもは頼もしいけど、でも今は正直
少しその頑固っぷりが辛い。

「兄さん、僕の話を聞いて。
 僕は……」
「お前では無理だ」
「古代!」
「コイツは戦士の何たるかを
 まるで理解していない。
 軍に属すれば最後、
 個人の思い等意味が無くなるんだ」
「だけど…だけど…
 宇宙戦士にならなきゃ
 お父さんとお母さんの仇が…」
「お前が宇宙戦士に成る必要など無い!」

言い切られた。
少しは僕の気持ちを
理解してくれていると思ったのに
兄さんは話を聞こうともしない。

それが無性に悲しかった。

兄さんは肩を震わせたまま
荒々しく扉を開いて出て行った。
あの分だと今日は来てくれない。
そのまま宿舎に戻って…
僕は1人、この病室で。

もう独りは嫌なのに。
独りになるのが嫌なのに。

「進君…」
「真田さん……」
「今日は俺が一緒に居よう」
「え? でも……」
「守兄さんじゃなきゃ、嫌か?」
「え? …うぅん。
 でも…真田さん、忙しいんじゃ…」
「なぁ〜に、仕事は全て済ませてあるよ。
 研究者にとっても
 こうやって息抜きをする時間は必要なんだ」
「息抜きに…なるの?」
「なるさ! あぁ、そうだ。
 進君は宇宙戦士にどうして成りたいんだい?」
「それは…お父さんとお母さんの仇を…」
「仇を取ったら、どうする? 辞めるのか?」
「え…?」
「辞められはしないぞ。
 仇を取って、その先にうんと長い苦しみが待っている」
「…真田さん」
「進君…。悪いが、俺も反対だ」
「……」
「今の君には『未来』が無い。
 例え宇宙戦士に成れたとしても…
 その先に待つのは破滅だけだ。
 俺も、可愛い弟にそんな未来を歩ませたくは無い」
「真田さん……」
「俺の言いたい事が解るか、進君?
 大切なのは『未来』だ。
 君はまだ若い。だからこそ、見誤ってはいけない」
「真田さん……」

真田さんは微笑を浮かべながら
兄さんと同じ様に、
優しく僕の髪を撫でてくれた。

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SITE UP・2010.06.01 ©Space Matrix

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