Sehnlichster Wunsch

この夢は久しぶりだ。
兄さんと一緒に寝ている時は
全くと言っていい程見なかった。

コレは恐らく、5歳の頃。
生まれ故郷、三浦の軍港で
大きな軍艦が帰還した。
街は一寸したお祭り騒ぎ。

その戦艦、確か…名前はナガト。
そう、ナガトの艦長の計らいで、
子供達は艦内の散策を許可された。

ウロウロしている内に
僕はとても暗い部屋に迷い込んでしまった。
もう1人、僕と同じ様に
迷子になってしまった男の子と一緒に
帰れなくなった事を悲観し、泣いていた。

あの人が、艦長さんが来てくれなかったら
僕達は一体どうなってただろう。

船の一番大切な部屋に案内された僕達は
其処で艦長さんとお話をした。

「僕…船長さんに成る!」

もう1人の男の子はそう言って
とても嬉しそうに笑っていた。
自分の名前も満足に言えない子だったけど
あの時の目の輝きは…
きっと、その夢を叶えるんだろうなって感じた。

「君はどんな大人に成りたいんだい?」
「僕はぁ〜昆虫博士に成るの。
 一杯勉強ちてるんだ」
「そうか、立派だぞ。
 いいかい。これから色んな事が起こるだろう。
 でも、夢を捨てちゃいけない。
 無闇に諦めちゃいけない。
 叶えようと努力する事こそが
 君の人生にとって一番大切な宝物なんだ。
 一杯勉強しなさい。
 そして、一杯友達を作るんだ」
「うん! ダイちゃんとはぁ〜お友達だから!」

ダイちゃん…だったっけ。
あの時の男の子の名前。
元気に、してるかな…?

僕は昆虫博士には成れないんだ。
でも、ダイちゃん。
君は…君の夢を叶えて。
僕の代わりに、叶えてね…。

* * * * * *

朝、目が覚めると真田さんの姿は無かった。
代わりに置かれたメモ書きを読んだ。

『進君、私は研究所に戻っている。
 何かあれば、直ぐに呼んでくれ』

病室の外に居る看護婦さん達の会話から
僕は真田さんが、
無理を承知で居てくれた事を知った。

僕の我侭に付き合った所為で
真田さんが怒られたりしないだろうか。
僕は、それが一番心配だった。

すると。

「古代君、お電話よ。
 出られるかしら?」

看護婦さんが僕にそっと
受話器を渡してくれた。
恐る恐る出てみると
その声は真田さんのものだった。

『よぅ、進君!
 おはよう、起きたかい?』
「真田さん! だ、大丈夫?」
『ん? 何がだ?』
「だって…真田さん、忙しいのに…」
『忙しくは無いさ。いつもの事だ』
「でも……」
『気にするな。
 俺は【弟】が心配なだけさ』

真田さん、僕の事を【弟】って言ってくれた。
さり気無いその一言に
僕は更に自分の【悲願】を強く感じた。

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SITE UP・2010.06.05 ©Space Matrix

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