沖田さんとの会話から見出せた事は
少なくとも、俺の中では糧となった。
再び難解な書類整理と戦っている最中
今度は誰かが俺を呼ぶ。
やれやれ、内線か。
今度は誰なんだ?
『随分と待たせてくれたな、古代』
「真田か。済まん」
『進君の事だが』
「その件なら後にしてくれ」
『何?』
「一寸厄介な敵を相手にしている」
『相手が紙切れ程度なら俺が援護してやる』
真田にはこの手の逃げ文句が一切通用しない。
普段は実に頼りになる男だが、
時々…俺よりも性質が悪いと認めざるをえん。
『進君は本気だぞ。
少なくとも、俺は彼のやる気を認めた』
「やる気だけで何とかなる世界じゃない」
『だが、やる気が無ければ何も出来ん』
「真田…。まさか、お前…進を……」
『俺が彼を焚き付けたとでも?
まぁ、それはそれで面白いかも知れんが』
「真田、貴様ッ!!」
『怒鳴るな。然もそれはお前の早合点だろう?』
「う……」
『妄想で一々怒鳴られていては
此方の耳が保たん』
真田は少しだけ咳払いをすると
急に声のトーンを落としてきた。
これは、何かある。
長年の付き合いから解る気配の変化。
『賭けてみないか? 古代』
「賭け? 何を?」
『進君が、歴史に名を残す様な
宇宙戦士に成れるかどうか』
「真田……」
『俺は成れる方に賭ける。お前は?』
「俺は、宇宙戦士になど……」
『じゃあ、お前は【成れない】方に賭けると…』
「そうは言ってないだろう?」
『古代。好い加減に認めたらどうだ?』
此処で俺は、漸く真田の本心が読めた。
やはりコイツは進の意を尊重したのだ。
『それに、彼はこれからどうするんだ?
学校だって進まないといけないだろう?』
「……」
『訓練学校ならば寮も完備されている。
いつまでも病院で厄介になる訳にもいかんだろう』
「家なら…俺が……」
『留守を守らせるつもりか?
あれほど寂しがっている子を、たった一人で』
「真田…」
『何時でも俺が傍に居てやれる訳じゃないんだぞ?』
そうだ。その通りだ。
呼び出されれば、俺は外宇宙に出ねばならぬ身。
真田だって、基本的に研究室に篭り切り。
誰も進を守ってはやれない。
もう、父さんも母さんも居ないのだ。
『そろそろ、飛び立たせてやってはどうだ?
お前の弟なんだ。
挑戦させてやれ、外の世界へ』
「……」
『その沈黙、【了承】と捉えたぞ』
「只で賛成は出来ん」
『…そう来たか。
まぁ、条件に関して俺は一切口を挟まん』
「感謝する」
『だが、これ以上進君を悲しませるなよ』
最後の一言は流石に心に堪えた。
まるで俺の内面を見透かしているかの様に。
【条件】とは耳障りの良い単語だ。
実際、コレを進は飲むだろうか?
飲まなければ宇宙戦士には成れない。
これからの人生に於いても、【糧】には成る筈。
俺はまだ、何処かで躊躇っていた。 |