島の奇行はそれから3ヶ月程続いた。
定期的に夜中、姿を消し
明け方になるとコッソリと部屋に戻ってくる。
服の隙間から見え隠れする傷跡や
火傷の跡が生々しい。
何処に行っているのか、
何をしているのか、
それを聞くのがとても恐ろしかった。
島は酷く疲れた様子で
気だるそうにベッドへと潜る。
そんな日の繰り返しだった。
* * * * * *
或る日、俺はとうとう耐え切れず
島にしがみ付いて縋った。
一緒に寝て欲しい、怖いんだ、と。
俺は特別何かを強請ったつもりは無い。
同じ布団に寄り添ってくれるだけで良い。
それだけで充分だった。
ただ、島の温もりに包まれて眠りたかっただけだ。
だが…島は全く違う解釈をしたのか、
露骨に眉を顰め、体を竦めた。
「島…?」
「当分、一人にしてくれないか?」
「え?」
「疲れてるんだ…」
島は俺の体をゆっくり引き離すと
そのまま自分のベッドへと戻って行く。
「お休み……」
俺に目を合わせようともしない。
顔を背けたまま、本当に寝入るつもりだ。
「島……」
「……」
返事は無い。
こんなに狭い部屋なのに、
今の俺にとってはとんでもなく広く感じて
それが余計に恐怖だった。
判るんだ。
こんな日は、こんな時は必ず見る。
【あの人】が夢の中に現れて
必ず俺を狂わせるんだ。
また、滅茶苦茶にされてしまう。
汚されて、打ち捨てられてしまう。
島だけなのに。
俺を救い出せるのは
島だけなのに…。
でも、今の島は…
俺よりも深く傷付いて、疲れ果てて…。
助けて欲しい。
いや、それ以上に助けたいのに
俺には…何も、何も出来ない。
「島……」
今は諦めるしかない。
俺も、孤独に戦うしかないんだ。
この【悪夢】と。
* * * * * *
夜半に時折聴こえてくる
古代のすすり泣く声が、苦手だった。
耳に何時までも残ってしまう。
鳴き声、悲鳴、懇願する言葉。
普段のアイツからは想像もつかない
弱々しい音の数々。
荒い息、揺れるベッドと軋む音。
昔は、意味が解らずに怖かった。
今は、意味が解るからこそ怖い。
また、聞こえてくる。
古代の悲鳴が。
その度に思い起こされる。
傷が疼く。
おかしくなってしまう、俺も…。
「古代…古代ぃ……」
布団にしがみ付き、震えながら
俺はあの時と同じ様に
古代の名を呼ぶ事位しか出来ない。
一体何時まで続くんだろう。
俺達のこの苦しみは。
この悲痛な悲しみは。 |