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この航海は大体にして「無謀」と呼べる代物だった。 玄人目にしてもお勧め出来ない死への巡業。 未知の空間に飛び立った俺達に 『希望』と云う名の言葉は余りにも小さ過ぎる灯火。 だからこそ、俺は求めた。 俺を支えてくれる存在を。 俺が支えられる存在を。 極限の状態に置かれて、人は初めて知る。 自分の敵も、味方も。 俺にとって最高の友人は最高の理解者で在り、 最大の支えとなり…俺の隣に居てくれる。 こんな幸せな事は無い。 気付けただけ、俺は恵まれているのだ。 他愛ない会話を島と済ませ、 俺はいつもの調子で廊下を歩いていた。 格納庫、コスモ・ゼロの調整に向かったのだ。 反対側を歩いてくるのは…藪だ。 徳川機関長の片腕として、なかなかの働きをしているが 正直コイツの考えは…まるで読めない。 不気味な迄に沈黙を守り、此方の様子を盗み見てくる。 俺は自分の意志を明確に表してくれる人間が好きだ。 多少、表現の差は有るだろうが…。 島や加藤は歯に衣着せぬ発言をしてくるし 山本は軌道修正が必要な時だけ口を挟んでくる。 真田さんにしても、相原や南部、太田にしても。 勿論雪や佐渡先生、アナライザーに至るまで。 閉ざされた空間での共同生活に於いて 自分の思いを伝える事は 決して手を抜いてはいけないルールだと思っている。 しかし、藪にはそれが無い。 俺は何も感じる必要など無い筈なのに 思わず奴の纏う雰囲気に飲み込まれそうになるのを防ぐ為 少しだけだが、身を萎縮させて道を譲った。 「…どうも」 「あ、あぁ……」 聞き取り難い低く小さな声。 礼を述べただけだろうが、どうも素直に受け取れない。 藪はそのまま何も言わず、廊下の奥へと姿を消した。 俺もそれを確認してから格納庫へと急いだ。 自動操舵に切り替え、一息吐いていると 後方から誰かの気配を感じた。 「お疲れさん、島」 「真田さん…」 「お前も随分と逞しくなったな。 安心して舵取りを見守っていられる」 まさか真田さんに褒められるとは思っていなかった俺は 思わず顔を赤らめて俯いてしまった。 「ははは、何も照れる事は有るまい? 俺は事実を述べただけだよ」 「いや…その、慣れないもので……」 「そうかい?」 「はい…」 「古代は?」 「え?」 「古代の奴は常日頃から お前の舵取りを感心しているがな。 アイツ、興味が有るらしくて いつかお前に習うんだと息巻いていたぞ」 「古代が……」 何だか可笑しい。 戦闘機乗りの古代が、ヤマトの舵取り? 想像してるだけで、余りに似合わぬその姿に 申し訳無いが…笑い声が漏れた。 「…良かったよ、本当に」 「? 真田さん?」 「あぁ、済まん。独り言だ」 「はぁ…」 追求はしなかった。 何故なら、普段…無表情に近い真田さんが 本当に嬉しそうな笑顔を浮かべていたのだから。 |