File.1-12

「チーフ、まだ上がらないんですか?」

戦闘機の機器チェックに集中していた俺は
加藤の声にハッとなり、慌てて顔を出した。

「お前、先に上がって良いぞ」
「いやぁ〜、今日の格納庫の最終点検…自分なんですよ。
 だから、チーフの作業を終えてからじゃないと上がれません」
「俺が最終点検をしておくから上がれよ」
「良いんですか? チーフ自らがルール破って」
「破るんじゃない。順番を入れ替えるだけだ」
「そう云う事でしたら…お願いしようかな」

格納庫の入り口付近で人影が見える。
恐らくあのシルエットは山本だろう。
一緒に飯でも食いに行くつもりか、ならば待たせるのは悪い。

「俺だって偶には
 戦闘機やオイルの匂いに包まれたい時だって有る。
 良いから行け」
「はい! では加藤 三郎、お先に上がらせて頂きます!!」

ウキウキしながらも敬礼をし、足早に去って行く加藤。
その後姿を見守りながら
俺は彼等と最初に会った頃を思い出していた。

* * * * * *

父と母を遊星爆弾で喪った後
俺は火星の宇宙戦士訓練学校へ進学した。
ガミラスへの復讐心、それだけが俺の支えとなり
俺は維持になって宇宙戦士としての資質を高めていった。
無我夢中の日々。周囲を見渡す余裕など無い。

それに、時折地球に居る家族と
楽しそうに団欒する学友の姿は
何よりも俺を苦しめ、追い詰めた。
勿論彼等に何の咎も無い事位解っている。
俺の…只の嫉妬心や我侭だと。
だが、どんなに望んでも俺には、もう……。

「おい、古代!」
「……」
「古代! おい、古代…」
「聴こえてるよ。何度も何度も五月蝿いな」
「聞こえてるなら返事位しろよ」

訓練学校の寮で、俺はコイツと初めて出会った。
島 大介。
後にヤマトにて俺が最も頼りとする相棒となる…男。

島には歳の離れた弟が居るらしく、面倒見が良い。
グループ演習等に於いても抜群のリーダーシップを発揮し
教官達の評価も頗る高かった。
出来る男と云うのは、得てして自慢をしない。
成績は俺といつも拮抗しており、航海術に関しては正に敵無し。

「それだけ俺を呼んだって事は…
 何か重要な用事でも有ったのか?」
「何だよ、それ?
 重要な用事が無きゃ、お前を呼んだら駄目なのか?」
「……」
「飯の時間だから、一緒に食いに行かないか?って
 誘いたかっただけなんだがな」
「……」
「どうする、古代?」

島は人懐こい笑みを浮かべている。
同室の人間の誘いを無下に断る訳にも行かない。
どうするべきか。

「行こうぜ!」
「!!」

島は俺の返事を待たず、腕を取って
強引に食堂へと連れて行ってしまった。

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SITE UP・2010.02.12 ©森本 樹

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