File.1-16

「島」
「おぉ、古代。戻って来たか」
「あぁ。現状は?」
「全く以って問題無し。気持ち良い航海だ」
「それは良かった。
 ヘッポコ航海班長殿もこれで一安心だな!」
「一言多いんだよ、お前は!」

第一艦橋に活気が戻る。
じゃれ合う2人を温かく見守るクルー達。

「おい古代、島。
 暴れるのは良いが操縦桿だけは壊すなよ」
「本当、古代さんの馬鹿力には敵いませんから」
「おい、南部! 莫迦とは何だ、莫迦とはっ!!」
「『莫迦』とは言ってませんよ。『馬鹿力』だと言ったんです」
「また莫迦と言ったろ!」
「古代君! 戻って早々、皆の邪魔をしないの」
「…ちぇっ」

古代は態と子供の様に拗ねて見せ、
そのまま自分の席へ勢いよくドサッと座る。

「まるでガキだな、ポンコツ戦斗班長」
「…何ぃ〜〜〜っ?!」
「さっきのお返しだよ」
「島…お前って奴は…っ!!」
「おいおい、また始まったぞ…」
「どうする、あれ?」
「もう良い。放っておけ…」

第一艦橋内が一番幸せな時間。
永遠には続かない、とても短い時間。
だからこそ、その価値は皆…解っている。

「おい、古代。それと、島!」
「は、はい!」
「何でしょうか、艦長?」
「お前達、今日はもう上がっても良し。
 自動航海可能区域に到達したみたいだからな。
 暴れるのならば自室でやる様に」
「は…はい」
「…了解しました」

罰が悪そうに顔を合わせる古代と島。
その阿吽の呼吸にまた周囲から笑い声が上がる。

「お…お前等…っ!!」
「もう止せ、古代。行くぞ」
「あ…うん、解った…」

2人は沖田艦長に敬礼し、仲良く第一艦橋を後にする。
静かに後姿を見つめる艦長の目は
上官のそれではなく、正に…『父親』そのものであった。

* * * * * *

廊下で並んで歩きながらも
古代は手足を使い、派手に抗議を続けていた。
それに相槌を打ちながらも
島はニコニコと笑ってばかりだ。

「おい、聴いてるのか…島?」
「勿論、ちゃんと聞いてるよ」
「本当かよ…?」
「あぁ。先程の言い分はこうだ」

島は先程古代が自分に向けて発言した内容を
そっくりそのまま一字一句間違えずに再現した。
改めて島の口から聞かされる自分の言葉の幼稚さに
古代は耳まで真っ赤に染め上げていた。

「…ったく、何だよ」
「ん?」
「同い年だってのに…
 何時だってお前が俺の兄貴みたいじゃないか」
「仕方が無いだろう?
 実際に俺は兄として、お前は弟として生まれてきた。
 長年の習慣がそうそう変えられる訳無かろう」
「それは…そうなんだが……」

初々しい仕草を見せる古代に対し
愛の言葉一つでも囁こうと思ったのだが、
島は先程から背後の人影を警戒していた。
此処連日感じる、自分達の様子を窺う好色な気配。

『又か…。全く、暇な奴め』

不気味な覗き魔にサービスするつもりなど毛頭無い。
此処からなら自分の部屋の方が近い。
直ぐに室内に入ってしまおう。
島は非常に冷静かつ迅速に行動計画を立てていた。

「古代、言いたい事は多々有るだろうが…
 続きは俺の部屋でしてくれ。
 お前の説教に付き合ってやるから」
「説教って…おい…」

少し乱暴かとは思ったが
気配に気付いていない古代に対し説明する時間も無く、
島はそのまま彼の手を引いて自室へと消えた。

[15]  web拍手 by FC2   [17]



SITE UP・2010.02.16 ©森本 樹

【書庫 目次】